野鳥の美しい鳴き声は、四季を通じて私たちの生活に豊かな彩りを与えてくれます。春のウグイスの「ホーホケキョ」から冬のジョウビタキの愛らしい鳴き声まで、野鳥は季節の移ろいを音で教えてくれる大切な存在です。
この記事では、野鳥の鳴き声の特徴から季節ごとの代表的な野鳥まで、バードウォッチング初心者から経験者まで役立つ情報を詳しく解説します。
野鳥の鳴き声の基礎知識
さえずりと地鳴きの違い
野鳥の鳴き声には、大きく分けて「さえずり」と「地鳴き」の2種類があります。
主に春夏の繁殖期に、雄が「雌を呼ぶ」「なわばりを宣言する」などの意味で鳴くのを「さえずり」と呼びます。
さえずり以外の雄でも雌でも、季節を問わず聞かれる声をまとめて「地鳴き」と呼びます。
さえずりの特徴:
- 主に繁殖期(春~夏)に聞かれる
- オスがメスへの求愛やなわばり宣言のために鳴く
- 複雑で美しいメロディー
- 種類によって特徴的なパターンがある
地鳴きの特徴:
- 年間を通じて聞かれる
- オス・メス問わず鳴く
- 警戒や仲間との連絡のため
- 比較的シンプルな音

ウグイスが「ホーホケキョ」と鳴くのはさえずりです。地鳴きでは「ジャッ、ジャッ」と一音ずつ区切った音で鳴いています。
鳴き声で野鳥を識別するコツ
野鳥の識別において、鳴き声は非常に重要な手がかりです。目だけで小鳥を探すのは難しいですが、”さえずり”をたよりにすると見つけやすくなります。
鳴き声識別のポイント:
- 音の高さ:高音、中音、低音
- 音の長さ:短い音、長く引く音
- リズム:連続音、間隔のある音
- 音の質:清澄、濁った音、金属音
「声の質」「鳴き方」の特徴を目安に、鳥の種名をあたってみましょう。
春の野鳥と鳴き声


春は野鳥にとって最も活発な季節です。特に春は鳥にとって”恋の季節”で、オスがメスにアピールをするためにたくさん”さえずり”ます。そのためこの時期はたくさんの種類の鳴き声が聞けますよ。
代表的な春の野鳥

ウグイス
特徴: さえずりは、おなじみの「ホーホケキョ」のほか、「ケキョケキョ」と繰り返すこともあるそう。
観察時期: 一般的には、3月初め頃からさえずり始めます。
生息環境: クマザサなどの茂みを好み、郊外のやぶがあるところにいるかもしれません。

メジロ
特徴: 目のまわりが白く、暗黄緑色をした小鳥。スズメより一回り小さい。全長12cm。
鳴き声: 「チーチュルチーチュルチチルチチルチュルチー」と10秒以上続くさえずりで、高く複雑な鳴き方をします。
観察場所: ウメやサクラなど花の咲く木のまわり

ヒバリ
特徴: 空を飛びながらさえずるのも特徴なので、さえずりが聞こえたら、空を見上げてみましょう。
生息環境: 農耕地や空港などの開けた場所で見られるほか、2000mくらいの草の生えていない「ガレ場」のある山(富士山や浅間山、蔵王など)にもいることが近年の研究でわかったそうです。

ツバメ
3月になり、春の暖かさがだんだん近づいてくる時期にツバメはやってきます。人里近くで巣作りを行い、子育ての様子も観察できます。
夏の野鳥と鳴き声


夏鳥は主に繁殖のために日本にやって来る野鳥たちです。パートナーを見つけるために美しい声でさえずる野鳥も多く、見た目だけでなく声でも楽しませてくれる種類も多いのが特徴です。
代表的な夏鳥

キビタキ
キビタキは鮮やかな黄色の体にきれいな声でさえずる人気の夏鳥です。人気がある夏鳥の中でも数が多く、観察機会も多い野鳥です。

オオルリ
日本3鳴鳥でも知られ囀りが美しい、日本 3 大青い鳥としても知られる、大きさは約 16-21cm(スズメより大きい)野鳥です。

アカショウビン
アカショウビンは夏鳥として人気が高い野鳥の一つです。
夏の野鳥観察のポイント
夏鳥を観察する際は、この繁殖期に伴う行動がとっても面白いのです!特に注目したいのは以下の2点です:
- さえずりが聞ける
- 子育てが見られる
鳥の多くは夏に「繁殖活動」を行うため、夏鳥の滞在中の主な活動は繁殖に関連するものです。
秋の野鳥と渡りの季節


秋は野鳥を間近に観察できる絶好のチャンス。越冬地へ向かう旅の途中で立ち寄る鳥、冬を越すために渡ってくる鳥、標高の高い場所から平地に降りてくる鳥など、鳥たちの移動が盛んになる秋だからこそ見られる野鳥がたくさんいます。
秋に観察しやすい野鳥

エゾビタキ
日本よりも南で越冬する”旅鳥”の代表格で、この鳥にとっては日本列島は通過点のひとつです。

ジョウビタキ
日本的な美を感じさせる冬の小鳥の代表格として親しまれています。

アカゲラ
日本のキツツキ類の代表的存在で、秋から冬にかけて観察しやすくなります。
冬の野鳥と鳴き声


冬は葉が落ちて、鳥の姿を観察しやすい季節ですよ。ただ、冬は鳥があまり鳴かないので、鳴き声はなかなか聞きにくい。そのため、静かに観察することが重要です。
代表的な冬鳥

ツグミ
スズメに似た茶色で腹のうろこ模様が目立つ。スズメよりひと回り大きく、ムクドリと同じくらいの大きさ。全長24cm。

シメ
基本的に地面に降りてイネ科の植物の種や小さな虫を啄む行動が観察できます。

キクイタダキ
日本最小の鳥です。夏は亜高山帯(2000m前後の山)で過ごし、冬になると東京・高尾山のような低い山に下りてきます。

マガモ
オスは頭部が光沢のある美しい緑色ですが、メスは全体的に茶色で、カルガモ(雄雌とも茶色)との見分けが難しいといいます。マガモは冬が結婚シーズンなので、つがいで仲良く泳いでいることが多いそうです。
冬の野鳥観察のコツ
冬は食べ物が1番少なくなる季節。鳥たちは食べ物を求めて、普段よりも広い範囲を行動し、食べるのに忙しくて警戒心も低くなりがちなため、実は観察には適した季節でもあります。
日本野鳥の会について

団体概要
公益財団法人日本野鳥の会(Wild Bird Society of Japan)は、1934年3月に「日本野鳥之会」として中西悟堂氏により創立された歴史ある自然保護団体です。
発起人には、中西悟堂氏、黒田長礼氏、北原白秋氏、鷹司信輔氏、戸川秋骨氏、金田一春彦氏なども名を連ねています。
基本情報:
- 創立年:1934年(令和6年で90周年)
- 支部数:全国85支部
- 会員数:33,283人(2024年1月5日現在)
- サポーター数:16,879人(2023年6月1日現在)
- 本部所在地:東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
主な活動内容
1. 探鳥会・バードウォッチング活動
各支部では会員によるボランティア運営で、地域密着型の探鳥会を定期開催。初心者でも安心して参加できるよう、経験豊富な指導者がサポートします。
2. 野鳥保護区の設置・管理
- 実績:全国で4000ha以上の民間野鳥保護区を設置(2024年現在)
- 方法:土地購入や開発協定により保護区を確保
- 歴史:1987年、根室市のタンチョウ生息地の湿原約7haに野鳥保護区を設置したのが民間初
3. 教育・普及活動
- BIRD FAN:野鳥を楽しむウェブサイトの運営
- 野鳥図鑑・書籍:『フィールドガイド日本の野鳥』など多数出版
- 会誌「野鳥」:会員向け定期刊行物
- 小冊子配布:バードウォッチング入門資料の無料配布
4. 自然保護活動
野鳥の生息環境保護、環境調査、政策提言など、幅広い自然保護活動を展開。
入会・参加方法
入会資格: 野鳥や自然を大切に思う方ならどなたでも会員になれます
入会のメリット:
- 全国の探鳥会への参加
- 支部活動への参加
- 会誌「野鳥」の受取
- 野鳥保護活動への参加
- 専門的な野鳥情報の入手
公式サイト・関連リンク
- 公式サイト:日本野鳥の会
- BIRD FAN(野鳥情報サイト):https://www.birdfan.net/
- インターネットショップ:Wild Bird Shop
- 支部一覧:全国支部情報
お問い合わせ先
本部事務所
- 住所:〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23 丸和ビル
- 電話:03-5436-2620
- FAX:03-5436-2635
- アクセス:東急目黒線「不動前」駅より徒歩5分
自然保護に関すること
- 電話:03-5436-2633(月~金曜日 10:00~17:00)
各支部の連絡先や活動情報については、公式サイトの支部一覧ページをご確認ください。
野鳥の鳴き声を学ぶためのリソース

おすすめの図鑑・音源
バードリサーチ鳴き声図鑑 バードリサーチではご要望の多かった鳴き声の図鑑をつくりました。鳴き声を覚えるためのページもできました。鳥の鳴き声 マイスターへの道 クイズ形式やソナグラムを使った実践形式で鳥の声を学べます。
サントリー「日本の鳥百科」 「日本の鳥百科」に掲載している鳥を、鳴き声から検索できます。聞こえてくる野鳥の鳴き声がどの鳥のものなのか、調べてみませんか?
日本野鳥の会 BIRD FAN 野鳥図鑑、バードウォッチング入門など、野鳥を楽しむための最新情報を、初心者の方、一般の方向けににわかりやすく紹介しています。
鳴き声学習のポイント
- 繰り返し聞く:同じ鳥の鳴き声を何度も聞いて記憶に定着させる
- 聞きなしを活用:人間の言葉に置き換えて覚える(例:ウグイスの「ホーホケキョ」)
- 実際の観察と組み合わせる:音源だけでなく、実際のフィールドでの体験を積む
- 季節性を理解する:さえずりは主に春夏、地鳴きは通年聞けることを把握する
バードウォッチングの基本
必要な道具
- 双眼鏡:8倍程度の倍率がおすすめ
- 野鳥図鑑:フィールドで使いやすいコンパクトなもの
- 野鳥手帳:観察記録用
観察のマナー
- 静かに行動する:大きな音を立てないよう注意
- 巣に近づきすぎない:繁殖期は特に注意が必要
- 私有地への立ち入り禁止:許可なく他人の土地に入らない
- ゴミは持ち帰る:自然環境の保護
初心者におすすめの観察場所
野鳥は遠くに行かなくても、出会うことができます。バードウォッチングを楽しむには、まずは「身近な場所で、身近な鳥から」がよいでしょう。
身近な観察スポット:
- 公園
- 神社やお寺
- 池や川
- 住宅地の庭
家の近所の身近な場所、例えば公園、神社やお寺、学校の校庭、池や湖、川などに出かけてみましょう。野鳥がいることに1回気がつけば、他の鳥も見つけることができます。
野鳥観察で季節を楽しむ
バードウォッチングの楽しみの一つに、野鳥を通して季節の変化を感じることができることがあります。
季節ごとの楽しみ方
春: さえずりの季節を楽しむ 夏: 子育ての様子を観察 秋: 渡り鳥の移動を観察 冬: 葉が落ちて観察しやすい環境を活用
春の鳥たちのさえずりは、それぞれが異なるメロディーを持っています。ウグイスの「ホーホケキョ」という鳴き声は、春の訪れを象徴する代表的なメロディーとして、多くの人に愛され続けています。

野鳥完全ガイドのまとめ
野鳥の鳴き声は、私たちに季節の移ろいを教えてくれる貴重な自然の恵みです。春のさえずりから冬の静寂まで、一年を通じて野鳥たちは様々な表情を見せてくれます。
これらの鳥たちの歌声は、私たちの心を癒し、自然への感謝の気持ちを思い出させてくれます。日本野鳥の会のような専門団体の活動により、野鳥とその生息環境が守られ、私たちも継続してその美しい鳴き声を楽しむことができるのです。
初心者の方は、まず身近な公園でスズメやシジュウカラなどの留鳥から観察を始めることをおすすめします。慣れてきたら季節ごとの渡り鳥にも注目し、野鳥の鳴き声と共に豊かな自然との触れ合いを楽しんでください。バードウォッチングを通じて、私たちの身の回りにある自然の素晴らしさを再発見していただければ幸いです。
参考文献・出典
主要な情報源
記事作成参考サイト
- 春に出会える野鳥14選|じゃらんニュース
- 身近にいる「冬の野鳥」15選|じゃらんニュース
- 登山×野鳥図鑑|秋の里山&低山で見られる鳥|YAMAP MAGAZINE
- この夏に観察したい人気の夏鳥たち|野鳥情報.com
- 日本野鳥の会各支部サイト
注記 本記事は上記の信頼できるソースから得た情報を基に作成しており、野鳥観察の参考としてご活用ください。最新の情報については、各公式サイトをご確認ください。