すずめとつばめの完全ガイド:鳴き声・食べ物・違いを徹底解説
日本人にとって最も身近な小鳥といえば、すずめとつばめでしょう。
毎日のように見かけるこの2羽の小鳥は、実は私たちが想像している以上に奥深い世界を持っています。
本記事では、すずめとつばめの鳴き声の意味、好きな食べ物、海外での事情、そして見分け方まで、これらの愛らしい野鳥について詳しく解説します。
すずめのさえずりに隠された秘密

すずめの鳴き声は高度なコミュニケーション言語
すずめの「チュンチュン」には実は深い意味があります。
単なる鳴き声ではなく、状況に応じて使い分けられる高度なコミュニケーション手段なのです。
状況別・すずめの鳴き声の意味
警戒音:「チュンチュン!」(短く鋭い音)
- 天敵や危険を察知した時の警告音
- 群れ全体に危険を知らせる重要な役割
求愛音:「チュルチュル♪」(長く複雑な音)
- 繁殖期のオスがメスにアピール
- 鳴き声の長さや複雑さで健康状態をアピール
仲間への合図:「チュンチュン♪」(穏やかな音)
- 群れでエサを探している時の位置確認
- エサ場の情報共有にも使用
親鳥への要求:「ピーピー!」(高い音)
- ひなが親鳥にエサをねだる時
- 巣立ち直前は回数が増加

研究によると、都市部のすずめは騒音の影響で高音域の鳴き声を使う傾向があり、環境に適応した進化を見せています。
すずめが大好きな食べ物と与えてはいけないもの

すずめの好物ランキング
1位:イネ科の種子
- 生米(乾燥した状態)
- エノコログサ(ネコジャラシ)の穂
- ヒエ、アワなどの雑穀
2位:昆虫類(特に繁殖期)
- イナゴ、アブラムシ
- 蛾の幼虫
- 小さなクモ
3位:市販の小鳥用エサ
- カナリーシード
- 皮付きの粟、ヒエ
- ボレー粉(カルシウム補給)
4位:季節の自然食
- 乳熟期のお米(秋季限定)
- 野草の種子
- 木の実
絶対に与えてはいけない食べ物
危険度★★★
- チョコレート:テオブロミンによる中毒
- アボカド:ペルシンによる中毒症状
- カフェイン含有飲料:心臓への重篤な影響
危険度★★☆
- 炊いたご飯:そのう炎の原因
- パン:炭水化物によるそのう炎
- 塩分の高い食品:腎臓への負担
餌やりの注意点
- 一度に与える量は500円玉大の面積程度
- 自然の餌が豊富な春夏は控えめに
- 近隣住民への配慮を最優先に
世界のすずめ事情:海外ではこんなに違う
英語では「Sparrow(スパロー)」

すずめは英語で「Sparrow」と呼ばれ、世界中に約30種類のすずめの仲間が存在します。
ただし、日本のすずめ(学名:Passer montanus)と海外のすずめは別種です。
日本と海外のすずめの違い
日本のすずめの特徴
- 頬の黒い斑点(耳羽)
- 人間の生活圏に依存
- 警戒心が強い
海外のイエスズメ(House Sparrow)
- オスの頭部に灰色の部分
- ヨーロッパ、中央アジアに分布
- 日本のすずめより人に慣れやすい
興味深い海外事情
- ロンドンのすずめ:至近距離でも逃げない
- ヨーロッパ:イエスズメが都市部を占有し、日本と同種のすずめは森林部に生息
- 世界的傾向:先進国では軒並み個体数が減少

海外でも深刻なすずめ減少問題
ヨーロッパの事例
- イギリス:25年間で90%減少
- ロンドン:5年間で50%減少
アジア・アフリカ地域
- インド:都市部で激減
- 世界的な現象として認識
すずめの現状:実は減少が深刻な問題
最新の調査結果が示す厳しい現実
環境省の調査結果(2024年発表)
- 前回調査比で約30%減少
- 1970年代比では約90%減少
- 現在の推定個体数:約1,800万羽
減少の主な原因
1. 営巣場所の消失
- 現代住宅の隙間減少
- 軒の出の短縮
- サイディング外壁の普及
2. 食料環境の変化
- 農薬による昆虫減少
- 田畑から畑地への転換
- 都市部の緑地減少
3. 気候変動の影響
- 繁殖期の餌不足
- 異常気象による生存率低下

この減少率は絶滅危惧種レベルに相当し、早急な保護対策が求められています。
つばめの基本情報と生態

つばめの特徴
分類:スズメ目ツバメ科ツバメ属 全長:約17cm 特徴:
- 喉から額にかけて赤茶色
- 光沢のある藍黒色の背中
- 深い二股の尾(燕尾形)
- 細長い翼で空中生活に特化
つばめの渡り
春の到着(3-4月)
- 台湾、フィリピン、マレーシアから飛来
- 毎年ほぼ同じ時期に到着
- オスが先に到着し巣の準備
秋の出発(9-10月)
- 家族全員で南へ移動
- 数千キロの長距離移動
つばめの食生活
主食:空中の昆虫
- ハエ、蚊、アブ
- 羽アリ、小さな甲虫
- 1日に600回以上のエサ運び

この昆虫食により、つばめは古くから益鳥として大切にされてきました。
すずめとつばめの見分け方完全版

外見での違い
特徴 | すずめ | つばめ |
---|---|---|
大きさ | 約14-15cm | 約17cm |
体型 | ずんぐりと丸い | 細長くスマート |
色 | 茶色系(頭は赤茶色) | 藍黒色(喉は赤茶色) |
尾 | 短い | 長い二股尾 |
頬 | 黒い斑点あり | 黒い斑点なし |
行動での違い
移動方法
- すずめ:地面で両足ジャンプ
- つばめ:ほぼ空中生活、地面にほとんど降りない
飛び方
- すずめ:短距離の直線飛行
- つばめ:長時間の滑空、急旋回が得意
鳴き声
- すずめ:「チュンチュン」
- つばめ:「チィチュロリ、チュリチュリ」
生活パターンの違い
すずめ
- 一年中同じ場所に滞在
- 人間の生活圏に依存
- 群れで行動
つばめ
- 春から秋の渡り鳥
- 人間を恐れず軒先に営巣
- つがいでの行動が中心
すずめとつばめの意外な関係性
巣をめぐる攻防戦
実は、すずめとつばめの間には激しい住居争いが存在します。
すずめによるつばめの巣襲撃
- つばめの卵やひなを巣から落とす
- つばめの巣を占拠して自分の巣に改造
- つばめのひな死亡の約50%がすずめの攻撃が原因
つばめの反撃
- すずめを追い払う行動
- 人間を用心棒として利用

この現象は、営巣場所の減少が背景にあると考えられています。
すずめの愛らしさの秘密

冬の「ふくら雀」現象
寒い季節のすずめの魅力
- 羽毛をふくらませて防寒
- まん丸な体型が愛くるしい
- 「福良雀(ふくらすずめ)」として縁起物にも
すずめの仕草の魅力
地面での動き
- 両足ジャンプの愛らしさ
- 首をかしげる仕草
- 群れでの整然とした行動
人間との距離感
- 約5mの警戒距離を保持
- 好奇心と警戒心のバランス
重要!すずめ・つばめは飼ってはいけません
多くの人が知らない重要な法律

すずめもつばめも、法律で飼育が禁止されています。これを知らない人がとても多く、善意で保護したつもりが法律違反になってしまうケースが頻発しています。
鳥獣保護管理法による規制
絶対に禁止されている行為
- 野生のすずめ・つばめを捕獲すること
- 許可なく飼育すること
- 巣や卵を採取すること
- 販売・譲渡すること
違反した場合の罰則
- 1年以下の懲役または100万円以下の罰金
- 交通違反よりもはるかに重い処罰
よくある「知らなかった」ケース
❌ こんな行動は実は違法
- 「ケガしているから助けただけ」
- 「ひなが落ちていたから保護した」
- 「一時的に預かっただけ」
- 「野鳥の会に相談したから大丈夫」
⚠️ 善意でも法律違反になります
ケガした鳥を発見した場合の正しい対処法
✅ 正しい手順
- まず自治体に連絡(都道府県の野生鳥獣担当部署)
- 指示を仰いでから行動
- 必要に応じて許可申請
- 勝手に触らず、専門家の判断を待つ
連絡先
- 都道府県庁の鳥獣保護担当部署
- 各市町村の環境部署
- 日本野鳥の会
なぜこのような法律があるのか
生態系保護の観点 野生動物は自然の一部を構成し、生態系の一翼を担っています。人間が野生動物を捕獲・飼育することで、自然や生態系のバランスを崩してしまう可能性があります。
密猟防止 愛玩目的での捕獲許可は、密猟を助長する恐れがあるため原則として認められていません。
私たちにできること:すずめ・つばめ保護への取り組み

個人でできる保護活動
1. 環境づくり
- 庭に野鳥が好む植物を植える
- 農薬使用を控える
- 巣箱の設置(適切な設計で)
2. 餌やりのマナー
- 適量を心がける(500円玉大の面積程度)
- 近隣への配慮を忘れずに
- 冬季限定での実施
3. 観察と記録
- 野鳥観察の記録をつける
- 地域の自然保護団体への参加
4. 正しい知識の普及
- 周りの人に法律について教える
- 「保護」と「飼育」の違いを理解する
避けるべき行動
✗ 無許可での保護・飼育
- 法律違反(最も重要)
- 生態系への悪影響
✗ 大量の餌やり
- 生態系バランスの破綻
- 依存関係の形成
✗ 巣の無断撤去
- 法的な問題(鳥獣保護法)
- 繁殖活動の妨害
まとめ:身近な野鳥との共生を目指して
すずめとつばめは、単なる「よく見かける鳥」以上の豊かな生態と文化的意味を持つ存在です。
しかし現在、両種とも深刻な個体数減少に直面しています。
重要なポイント
- すずめの鳴き声は高度なコミュニケーション手段
- 適切な食べ物と危険な食べ物の理解が重要
- 海外でも同様の減少傾向が見られる世界的問題
- すずめ・つばめの飼育は法律で禁止されている
- 正しい知識の普及が野鳥保護につながる
これらの愛らしい小鳥たちが、今後も私たちの身近な存在であり続けるよう、適切な知識を持って温かく見守っていきましょう。野鳥との共生は、私たちの生活をより豊かにしてくれるはずです。
参考文献・出典情報
学術研究・調査報告
- 三上修(2009)「日本におけるスズメの個体数減少の実態」日本鳥学会誌58(2):161-170
- 環境省生物多様性センター「モニタリングサイト1000 陸生鳥類調査報告書」(2021年)
- 環境省「自然環境保全基礎調査全国鳥類繁殖分布調査」(2016-2021年)
- 内田康夫・島津秀康・関本兼曜(2003)「都下自由学園周辺の鳥相変化と環境変動」Strix 21:53-70
専門機関・研究所
- 山階鳥類研究所「鳥類標識調査 仕事の実際と近年の成果」
- サントリー愛鳥活動「日本の鳥百科」
- 日本野鳥の会「全国鳥類繁殖分布調査」
報道・メディア
- 東洋経済オンライン「スズメの減少率が絶滅危惧種レベルという危うさ」(2024年10月)
- 日本経済新聞「スズメやオナガの減少深刻 里山の鳥・チョウ個体数調査」(2024年10月)
その他専門サイト
- スズメ研究所(suzume-lab.blog.jp)
- バードリサーチニュース
- 動物プロダクション SCIENCE FACTORY ltd.
注記:本記事の内容は2025年6月時点での最新情報に基づいており、継続的な研究により新たな知見が得られる可能性があります。