この記事では、過酷な環境で生きるシロクマの「野生と飼育下での寿命の決定的な違い」と、「世界最高齢のギネス記録」について詳しく解説します。単なる数字だけでなく、寿命を左右する背景にある環境の変化についても知ることができ、シロクマへの理解が深まる内容です。
シロクマの平均寿命:野生と飼育下での決定的な違い
まずは結論からお伝えします。シロクマ(ホッキョクグマ)の寿命は、「野生」か「動物園(飼育下)」かによって、約2倍もの開きがあります。

「同じシロクマでも、環境によってこれほど寿命が変わるなんて驚きですよね。具体的な数字を見ていきましょう。」
野生のシロクマ:平均15年〜20年の過酷な生涯
野生のシロクマの平均寿命は、一般的に15年から18年程度、長くても20代前半と言われています。
野生での厳しい現実
- 成獣の生存率: 厳しい寒さと食糧不足により、大人のクマであっても30歳まで生きることは極めて稀です
- 子グマの死亡率: 特に生後1年以内の生存率は低く、約50%しか生き残れないというデータもあります
Polar Bears Internationalの調査では、野生の平均寿命を15〜18年としており、これは他のクマ科動物と比較しても短い傾向にあります。
飼育下のシロクマ:30年以上生きることも珍しくない
一方、動物園などで適切な管理を受けているシロクマは、平均して25年〜30年、長ければ30代後半まで生きることがあります。
野生よりも長生きする主な理由
- 安定した食事: 毎日栄養バランスの取れた食事が保証されている
- 医療ケア: 病気や怪我をした際に獣医師による治療が受けられる
- 天敵・競争の不在: 餌を巡る争いや、他のオスとの闘争による怪我のリスクがない
デンマーク・南デンマーク大学の2020年研究によると、過去100年で飼育下の平均寿命は3.40倍に伸び、現在では野生の1.65〜3.55倍の長さとなっています。
シロクマと他のクマの寿命比較
シロクマは同じクマ科の仲間と比べても、野生での寿命が短い傾向にあります。
🐻 クマ科の寿命比較
| クマの種類 | 生息地 | 野生の寿命 | 飼育下の寿命 |
|---|---|---|---|
| ホッキョクグマ (シロクマ) | 北極圏 | 15〜18年 | 25〜30年 (最長42年) |
| ヒグマ | 北海道 | 20〜30年 | 30年以上 (最長47年) |
| ツキノワグマ | 本州・四国 | 15〜20年 | 30年以上 (最長39年) |
シロクマの寿命が他のクマより短い理由は、北極という極限環境にあります。
シロクマ特有の厳しさ
- 生息環境: マイナス40度以下になる極寒の地
- 餌の入手難易度: アザラシ狩りは高度な技術が必要
- 気候変動の影響: 海氷減少により狩り場が激減
一方、ヒグマやツキノワグマは森林に住み、木の実や草など多様な食物を得やすい環境にいます。同じクマ科でも、生息環境の違いが寿命に大きく影響しているのです。
なぜこれほど違う?寿命を縮める野生の過酷な現実
なぜ野生のシロクマは短命なのでしょうか。そこには、自然界の厳しさに加え、近年の環境問題が大きく関わっています。

シロクマの声「僕たちの住む氷の世界が、今どんどん小さくなっているんだ……。」
地球温暖化による狩場(海氷)の減少

シロクマの主食はアザラシですが、狩りをするには「海氷」が必要です。しかし、温暖化により氷が張る期間が短くなり、十分な脂肪を蓄えられないまま夏を過ごさなければなりません。
カナダ・ハドソン湾の調査結果
海氷が溶ける時期が1週間早まるごとに、シロクマの体重が10kg減少し、健康状態が悪化することが判明しています。
栄養失調は、免疫力の低下や繁殖能力の低下を招き、寿命を直接的に縮める要因となっています。実際、1984〜2009年の25年間で、オスの平均体重が45kg、メスが31kg減少したというデータもあります。
餓死と闘争のリスク
野生下では、「老い」はそのまま「死」を意味します。
- 歯の摩耗: 歯がすり減って獲物を食べられなくなる
- 体力の低下: 狩りができなくなるとすぐに餓死してしまう
- 闘争による怪我: オス同士の戦いで致命傷を負うこともある
これが、高齢のシロクマが野生でほとんど見つからない理由です。15歳を超えると身体能力が著しく低下し、生存が困難になります。
世界と日本の最高齢記録!ギネスに載ったシロクマ
ここで、人間によるケアがいかに寿命を延ばすかを示す、驚くべき長寿記録を紹介します。
世界のシロクマ最高齢:42歳の「デビー」
🏆ギネス世界記録に認定
史上最高齢のシロクマは、カナダのウィニペグ動物園で暮らしていたメスの「デビー(Debby)」です。彼女は2008年に亡くなるまで、42歳という驚異的な長寿を全うしました。
これは人間の年齢に換算すると、100歳を超える長寿に相当します。野生の平均寿命の2倍以上という記録は、適切な飼育環境がいかに重要かを物語っています。
出典: Guinness World Records – Oldest polar bear in captivity ever
日本のアイドル:愛媛県とべ動物園の「ピース」
日本国内で特に有名なのは、愛媛県立とべ動物園の「ピース」です。
ピースの特別な物語
- 日本初の人工哺育成功例: 人の手で育てられた日本初のホッキョクグマ
- 誕生: 1999年12月2日生まれ
- 現在の年齢: 26歳(2026年1月現在、国内最高齢級の人工哺育個体)
- 体重: 出生時わずか680グラム→現在約280kg
ピースは母グマが育児放棄したため、飼育員さんたちが24時間体制で世話をして育て上げた奇跡のクマです。彼女の成長は多くの人に感動を与え、「しろくまピース」として全国的なアイドルとなりました。

「ピースの存在は、飼育員さんの献身的なケアと愛情の賜物です。同時に、適切な環境と医療があれば、シロクマは30年近く生きられることを証明しています」
母と娘の物語:現在の国内最高齢は「ピースのお母さん」!

26年後の再会 – 同じ動物園で暮らす母と娘
実は、ピースには特別な家族がいます。同じとべ動物園で暮らす実の母・バリーバです。
バリーバのプロフィール
- 誕生: 1990年12月17日(デンマーク生まれ)
- 現在の年齢: 35歳(2026年1月現在)
- 地位: 日本最高齢のホッキョクグマ
1999年12月2日の出来事
初めての出産で混乱したバリーバは、生まれたばかりのピースを育てることができませんでした。双子のうち1頭は咬傷で死亡、ピースも育児放棄され、人工哺育の道を歩むことになりました。
26年後の2026年現在
母娘は同じ動物園で元気に暮らしています。2024年1月に王子動物園のミユキ(33歳)が亡くなったことで、バリーバが日本最高齢の座に就きました。
母と娘が共に長寿記録を更新し続けるこの物語は、適切な飼育環境がいかに重要かを物語っています。
日本のシロクマ長寿記録
| 個体名 | 年齢 | 施設 | 備考 |
|---|---|---|---|
| バリーバ | 35歳(現在) | とべ動物園 | 2026年1月現在の日本最高齢、ピースの実母 |
| ナナ | 36歳 | 八木山動物園 | 2021年1月死亡、日本歴代最高齢 |
| ポール | 34歳5ヶ月 | 京都市動物園 | – |
| コユキ | 34歳 | 旭山動物園 | – |
| ミユキ | 33歳 | 王子動物園 | 2024年1月死亡、「灘の貴婦人」 |
世界のその他のシロクマ長寿記録
デビーに続く長寿記録として:
- 米フィラデルフィア動物園「クロンダイク」: 34歳
いずれも30歳を超える驚異的な長寿記録です。
シロクマの寿命を支える動物園の取り組み

日本の動物園では、シロクマが少しでも長く健康に生きられるよう、様々な工夫をしています。
環境エンリッチメントの例
- 旭山動物園: 水中トンネルで泳ぐ姿を観察できる「ほっきょくぐま館」
- 円山動物園: 繁殖プログラムに力を入れ、自然に近い環境を再現
- 天王寺動物園: 道具を使って餌を取る知的行動が観察されている
これらの取り組みにより、退屈によるストレスを軽減し、心身ともに健康な状態を保つことができます。
国際的な協力体制
- 生息国5カ国(カナダ、アメリカ、ノルウェー、ロシア、デンマーク)が「ホッキョクグマの保護に関する国際協定」を締結
- ワシントン条約により過度な輸出入を規制
- 動物園間の繁殖プログラムで遺伝的多様性を確保

赤ちゃん時代を見たい人へ
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まとめ:寿命の差から見えてくること
寿命のまとめ
- 野生の寿命: 平均15〜20年(環境変化の影響を強く受ける)
- 飼育下の寿命: 平均25〜30年(医療と食事により長生き)
- ギネス記録: 世界最高齢は42歳のデビー
- 日本の記録: バリーバ35歳(日本最高齢)、ピース26歳(人工哺育最長)
動物園で長生きしているシロクマを見る際は、彼らが守られている存在であると同時に、野生の仲間たちが直面している厳しい現実にも思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
🌍 私たちにできること
シロクマの未来を守るために:
- 節電・省エネで温室効果ガスを削減
- 生活アクション、プラスチック削減
- 気候変動について学び、周囲に伝える
IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは、シロクマは絶滅危惧II類(VU)に指定されています。今、行動を起こすことが、彼らの寿命と種の存続を左右するのです。
🐻❄️ ピースとバリーバに会うには?
記事でご紹介した国内最高齢の母娘は、愛媛県で暮らしています。もし現地を訪れる際は、彼女たちの体調やペースを尊重して、静かに見守ってあげてください。
📍 愛媛県立とべ動物園
(愛媛県伊予郡砥部町)
📚 参考文献・出典
- • 愛媛県立とべ動物園 公式サイト
(ピースとバリーバの年齢・飼育状況について) - • Polar Bears International (PBI)
(野生のシロクマの生態・寿命データについて) - • Guinness World Records (Oldest polar bear)
(世界最高齢デビーの記録について) - • IUCN Red List (Ursus maritimus)
(絶滅危惧種の指定状況について)









