カツオドリとは?アオアシカツオドリ・ケープシロカツオドリ、かわいいカツオドリたち
時速100kmで海にダイブする鳥を見たことがありますか?
青い足で求愛ダンスを踊るアオアシカツオドリ、絶滅危惧種のケープシロカツオドリ、愛らしい雛たち。「海の猛禽」と呼ばれるカツオドリの世界は、驚きと魅力に満ちています。
小笠原諸島や伊豆諸島で観察できるこの素晴らしい海鳥について、詳しくご紹介します。
カツオドリとは

カツオドリ(学名:Sula leucogaster)は、カツオドリ目カツオドリ科カツオドリ属に分類される鳥類で、英名ではBrown boobyまたはGannetと呼ばれます。

海上の優れたハンターとして知られ、その独特な狩りの方法で小魚を捕獲する大型の海鳥です。
基本的な特徴
全長は64-74センチメートル、翼開張は130-150センチメートル、体重は約1キログラムです。
全身は黒い褐色の羽毛で覆われ、腹部や尾羽基部下面は白い羽毛で覆われています。
外見の特徴:
- 頭部から頸部・翼・背面は特徴的な黒褐色
- 腹部と尾羽基部下面は白色(種小名leucogasterは「白い腹の」の意味)
- 嘴と腹部は真っ白
- 足の根元は白い羽毛に包まれ濃い黄色
名前の由来と興味深い歴史
「カツオドリ」という名前の真実
多くの人が誤解していますが、カツオドリは実際にはカツオのような巨大魚を主食としません。
カツオなどの大型魚類に追われて海面付近に上がってきた小魚を狙い集まることから、漁師からカツオなどの魚群を知らせる鳥とみなされたことが由来です。
カツオに追われたイワシサイズの魚類を主食としており、本来はカツオとカツオドリは同じ獲物を狙うライバル関係なのです。
実は本種の和名も、元々は魚群を知らせる多くの鳥類に対し、漁民がつけた別称でした。
魚群探知機がない時代の重要な指標として、漁師たちに重宝されていたことがこの名前の背景にあります。

💡 豆知識
「昔の漁師さんたちにとって、カツオドリは天然の魚群探知機だったんですよ!
鳥が集まっているところには必ずカツオがいるって分かってたんです。
現代みたいに機械がない時代だからこそ、こういう自然の知恵が生まれたんですね」
世界的な分布と日本での生息状況
世界的な分布
カツオドリはインド洋、太平洋西部及び中東部、カリブ海、南部大西洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布しています。
日本での分布
日本では亜種カツオドリが仲御神島、伊豆諸島、硫黄列島、小笠原諸島、草垣群島、尖閣諸島で繁殖します。
鹿児島湾での観察記録もあり、2005年5月には兵庫県の瀬戸内海でも観察され、写真も撮影されています。
主要な観察エリア:
- 小笠原諸島:最も安定して観察できる地域
- 伊豆諸島:春から秋にかけて観察可能
- 硫黄列島:繁殖地として重要
- 南西諸島:沖縄以南で定住個体群が観察される
独特な生態と行動
狩りの方法
カツオドリの最も特徴的な行動は、そのダイナミックな狩りの方法です。
海上を飛行しながら獲物を探し、獲物が見つかると翼を後方に伸ばすような形になって急降下しながら海面にななめにダイビングして魚やイカなどを勢いよく捕らえて食べます。
船に到着したカツオドリは多くの場合、甲板に放置された魚をくわえて、最高で時速100キロ近いスピードで海中にダイブする。
飛行能力の特徴
鳥類としては体重があまりに重いため、島の傾斜地などを「滑走路」として助走をつけなければ飛び立つことができません。
また、着陸の際も怪我をしないよう最新の注意を払うなど、離陸と着陸が不得手な珍しい鳥としても知られています。
食性

🐟 カツオドリの食事メニュー
「カツオドリって完全に肉食なんです!主食は魚で、たまにイカも食べちゃいます。
面白いのは、人間の船が通るとトビウオがビックリして飛び跳ねるでしょう?
そこをカツオドリが『ラッキー!』って感じで集まってくるんですよ。
まるで人間と共同作業してるみたいで可愛いんです」
オスとメスの見分け方
カツオドリの雌雄判別は、細かい観察が必要な高度な技術です。
主な判別方法
- 目の周りの露出部分の色
- オス:黄緑色、メス:黄色
- 黒目の大きさ
- 黒目が大きい個体がメス、小さい個体がオス
- 瞳が小さい方は浅瀬にいる魚を捕り、瞳が大きな方は深い場所にいる魚を探せるとされています
カツオドリの性別判定はかなり細かい部分に着目しなければならず、研究者による性誤認もしばしば起こるほどです。
繁殖と子育て
繁殖期
カツオドリは繁殖期になるとオスとメスで「ブアブア(ゴアゴア)」と鳴きあいます。日本では3月から8月が繁殖期となります。
営巣と子育て
巣は、岩の上など高いところに、枯れ草などでつくられます。
1回に1~2個の卵を産み、オスメス交代で約43日間かけて抱卵し、孵化した後は親鳥が何度も餌を運んで子育てをします。
しかし、カツオドリのヒナは、野性界の厳しい掟に従うかのように、強いヒナが他のヒナを殺すこともあり、親鳥の子育ては1羽になる事が多いという厳しい現実もあります。
かわいいカツオドリの魅力

愛らしい特徴
カツオドリは、その独特な外見で多くの人に愛されています。
とても愛嬌のある顔をしている鳥で、特に若鳥の時期は人への警戒心が少なく、もともとの生息域が人間社会とは無縁ということもあるのだろう、ヒトへの警戒心がほとんどない場合もあります。
船との関係
カツオドリ達は船の後によくついて飛んできます。
これは船に驚いたトビウオが飛んでくるのを待ち構えているためで、この行動が観察者との距離を近づける魅力的な瞬間を作り出します。
カツオドリ科の仲間たち
アオアシカツオドリ:鮮やかな青い足の人気者

アオアシカツオドリ(学名:Sula nebouxii)は、鮮やかな青い足からこの名前が付けられたカツオドリ科の一員で、最も人気の高いカツオドリとして知られています。
基本情報
全長は約80cm (76-84cm)、翼開長約152cmで、雌雄よく似るが、雌のほうが大きく見える。
全長は同様であるが、雄は尾が長くて体が小さいことによる。
青い足の秘密
アオアシカツオドリの足が青くなるのは、食べている餌のせい。
彼らが食べているお魚にはカロテノイド色素という色素が含まれていて、この色素は海藻類などに多く含まれています。
餌によってアオアシカツオドリの足が青くなるので、赤ちゃんの時の足は青くないのです。
愛らしい求愛ダンス
夏場にアオアシカツオドリが繁殖の為にする求愛ダンスが人々を魅了して動画などでも鳥としては珍しいほど人気が高いです。
オスが足を交互に持ち上げ、メスの周りを踊り周ります。
また現在は巣を作りませんが、過去に作っていた頃の名残で、小枝や小石を相手に差し出す行動をするという、何か幼児がお遊戯しているような愛らしさがあります。
よちよち歩きながら、ペタペタとまるでタップダンスを踊っているような動きがなんともキュート!
生息地と保護状況
生息域は中央アメリカおよび南アメリカの西海岸沖である。
全つがいの約半数は、ガラパゴス諸島で繁殖する。
しかし、アオアシカツオドリは年々個体数が減少傾向にあり、絶滅の危機に瀕しています。

その理由は餌となるイワシが彼らの住むガラパゴス諸島で減少しているからです。
🎬 実際の映像で見るカツオドリ
下の動画では、カツオドリの実際の行動をご覧いただけます。
文章では伝えきれない迫力や可愛らしさを、ぜひ動画でお楽しみください。
いかがでしたか?実際に見ると、その魅力がより伝わりますね!
アカアシカツオドリ:日本の希少種


🦶 アカアシカツオドリの特徴
「名前の通り足が赤いのが一番の特徴です!でも実は羽の色にはバリエーションがあって、白い羽の個体と褐色の羽の個体がいるんですよ。他のカツオドリと違って木の上に巣を作る珍しい習性があるんですす」
日本での歴史的発見
2017年、南硫黄島で日本初となるアカアシカツオドリの集団営巣が確認されました。これは日本の鳥類研究史において非常に重要な発見として注目を集めています。
アカアシカツオドリの種類
現在確認されているアカアシカツオドリには3つのタイプがあります:
- 白色型:全身が白い羽毛(日本で発見されたのはこのタイプ)
- 褐色型:茶色っぽい羽毛
- 中間型:白と褐色の混合

📏 アカアシカツオドリのサイズ
「体長約75cm、翼開長約143cmで、カツオドリの仲間としては標準的なサイズです。特徴的な赤い足と、樹上に巣を作る習性が他のカツオドリとの大きな違いなんですよ」
ケープシロカツオドリ:南アフリカの絶滅危惧種

ケープシロカツオドリは南アフリカやナミビア近辺の海岸沿いに住んでいるカツオドリで、アフリカ南部沿岸の6つの島でのみ繁殖し、体長は約90センチ、広げると1.7メートルを超える翼を持ちます。
優れた狩りの能力
時速100キロもの速さで海に突っ込み、魚を追います。滑らかな流線型の体は、水深20メートルにまで潜る、優れた能力の証です。
深刻な保護状況
ケープシロカツオドリ減少の主な原因は、漁業資源の乱獲による食物の減少と、船による油流出事故などの汚染で、現在絶滅危惧種に指定されています。
観察方法とバードウォッチングのコツ

最適な観察時期
春から秋(3月~10月)がカツオドリ観察の最適な時期です。この時期は繁殖期と重なり、活発な行動を観察できます。
観察に適した場所
- 小笠原諸島
- 春から秋にかけて小笠原でよくみられる海鳥のひとつ
- 船の後によくついて飛んできます
- 伊豆諸島
- 繁殖地として安定した観察が可能
- 硫黄列島
- 専門的な観察ツアーで訪れることができる
保護状況と環境問題

現在の保護状況
カツオドリは現在のところ環境省のレッドリストには掲載されていませんが、繁殖地の保護は重要な課題となっています。
繁殖地となっている南硫黄島は南硫黄島原生自然環境保全地域に指定(1975年)され、全域が立入制限地区になっている。
直面している脅威
失明問題
カツオドリが直面する最も深刻な問題の一つが失明です。何度も激しいダイブを繰り返す事で頭を水面に叩きつける形になり、羽をたたむタイミングや水に入る角度が悪いと骨折や怪我などで命を落とす事もあります。
特に無防備でもある目などは一番弱く、ダイブの時の衝撃で網膜を傷つける事からやがて失明してしまうのです。その為、死亡原因のほとんどは失明によるものがほとんどという悲しい現実があります。
環境変化への適応
カツオドリは生息環境に柔軟に適応する能力を持ち、進化論的に言えば、船はこれまでになかった新しい物体だ。にもかかわらず、(カツオドリは)この新しい機会に完璧に適応することができているという研究結果もあります。
カツオドリの文化的意義
伝統的な利用
御蔵島ではかつてカツオドリの内臓を発酵させた肉醤が作られました。嘗物の他、明日葉の汁物の味付けにも使われたという記録があります。
カツオドリは20世紀の初め頃は食用として捕獲されていたと言われていて脂肪は医療で、羽毛は寝具などに使われていた歴史もあります。
現代での意義
現在では、カツオドリは海洋生態系の健康指標として重要視されています。彼らの生息状況は、海洋環境の変化を知る上で貴重な情報源となっています。
まとめ:カツオドリとの上手な付き合い方
カツオドリは、その独特な生態と美しい姿で多くの人を魅了する海鳥です。海の生態系における重要な役割を果たしながら、同時に環境変化に敏感な指標種でもあります。
観察する際は、彼らの生活を尊重し、適切な距離を保つことが重要です。小笠原諸島や伊豆諸島などの観察適地を訪れる際は、地元のガイドの指示に従い、持続可能な観察を心がけましょう。
カツオドリの存在は、私たちに海洋環境の大切さを教えてくれます。彼らが安心して生活できる環境を守ることは、豊かな海洋生態系を次世代に残すことにもつながるのです。
観察のポイント:
- 春から秋(3月~10月)が観察に最適
- 小笠原諸島、伊豆諸島が主要な観察地
- 双眼鏡と望遠カメラがあると観察が充実
- 野鳥の生活を妨げない距離を保つことが重要
- 地元ガイドの指示に従った責任ある観察を心がける
参考文献・出典
- Wikipedia「カツオドリ」(2025年2月更新)
- 世界の鳥の生態図鑑「カツオドリ(ガネット)の生態」(2022年2月)
- サントリー愛鳥活動「日本の鳥百科」
- 環境省関東地方環境事務所「カツオドリ」
- ナショナルジオグラフィック「カツオドリ、十キロ先から漁船を品定め」(2014年6月)
- Wikipedia「アオアシカツオドリ」(2023年10月更新)
- ナショナルジオグラフィック「アオアシカツオドリ」(2023年8月)
- もふもふポウズ「アオアシカツオドリはどうして足が青くなったの?」(2022年11月)
- World Travel And Animal「ケープシロカツオドリ」(2022年2月)
- エコファミリー「レッドリストの動物たち:ケープシロカツオドリ」(2023年10月)
- アルバトロスデー&シーバードウィーク「アカアシカツオドリ」
- キヤノンバードブランチプロジェクト「バードウォッチングの基本と道具」
- ペットの疑問解消ブログ「カツオドリは失明後狩りができる?」


