「なんでカンガルーってあんなにムキムキなの?」
「草食なのに、どうやって筋肉をつけてるの?」
SNSで話題になる“筋肉カンガルー”は、ただのネタではなく、生き残りのためのガチな進化の結果です。
特にムキムキに見えるのは、写真でよく出てくる大型種(例:アカカンガルー)や、成熟したオス個体が多いのもポイントです。
この記事では、カンガルーが筋肉質になる3つの理由と、草食でも筋肉が作れる科学的メカニズムを、できるだけわかりやすく解説します。
30秒で結論:カンガルーがムキムキな理由
カンガルーがムキムキなのは、ざっくり言うとこの3つです。
- メスをめぐる競争(強いオスほど繁殖で有利)
- オス同士の格闘(ボクシング+キック=筋肉が必要)
- 移動そのものが筋トレ(跳躍+尻尾=全身ワークアウト)
さらに決定打が、草食でも筋肉を作れる 「前胃(胃の前半)での微生物発酵」 という仕組み。ここが“科学で説明できるムキムキ”の核心です
カンガルーがムキムキに見えるのは「主にオス」
ムキムキ写真でよく見るのは、成熟したオスです。
実際、アカカンガルーは オスの肩や前腕がよく発達している ことが説明されています。

“ムキムキ=カンガルー全員”ではなく、性差+年齢+個体差が大きいよ!
カンガルーがむきむきな3つの理由
理由①:メスをめぐる“モテ競争”が筋肉を作る
カンガルーのオスは、繁殖のチャンスを増やすために、他のオスより強く・目立つ必要があります。
実際に研究では、オスの前腕(腕)の筋肉の大きさが、メスとの交尾成功に関わる可能性が報じられています。つまり筋肉は、ただの筋トレ成果じゃなくて“繁殖に有利な特徴”になり得るんです。
理由②:オス同士の闘いが「上半身まで」鍛える
カンガルーのケンカは、想像よりずっと格闘技です。
- 前足でジャブみたいに叩く(ボクシング)
- 尻尾と後脚で体を支えて、両足キック
- かみつきや組み付きが入ることも
そしてこの目的はシンプルで、優位性(ドミナンス)を示して繁殖のチャンスを得るため。“強いオス=有利”になりやすい世界だと、筋肉が発達しやすくなります。

理由③:日常生活が「天然のジム」になっている
カンガルーの移動は、ヒトの徒歩とは別物。跳躍(ホッピング)中心です。
さらに面白いのが尻尾。
速く動くときはバランスを取る“カウンター”になり、ゆっくり動くときは尻尾を地面について、前脚+後脚と一緒に体を支えると説明されています。
そして研究では、カンガルーの尻尾は「ただ支えるだけ」ではなく、前進の推進力まで出す=“第5の脚”みたいに働くことが示されています。
草食なのに筋肉がつく「科学的な仕組み」
ここが一番の疑問ですよね。
「肉を食べないのに、筋肉って作れるの?」
結論:作れます。
その鍵は “腸内”というより、胃の前半(前胃)で起きる「微生物発酵」 です。
カンガルー体内で起きていること(ざっくり)
- カンガルーが草(繊維が多い植物)を食べる
- 前胃にいる微生物が、草の繊維を発酵させる
- 発酵の結果、エネルギー源(短鎖脂肪酸など)や、微生物由来のたんぱく質が得られる
- それらが消化・吸収に回って、筋肉や体の材料になる
行政資料でも、カンガルーは 微生物による発酵で繊維質の植物を分解する ことが説明されていて、これが草食でも体を維持できる根拠になります。
また研究論文でも、カンガルー類は 拡張した前胃で発酵→その後に消化・吸収という流れ が整理されています。

草食=たんぱく質ゼロ、ではありません。
さらに“微生物の力”で、利用しにくい植物の栄養を回収できるのが強いんです。
カンガルーの驚異的な身体能力

ここは盛り上がるパートですが、数字は正確な情報に基づきます。
タロンガ動物園のアカカンガルー解説によると、その能力は以下の通りです。
| 能力 | アカカンガルーの数値 |
| 最高時速 | 最大64km/h |
| 跳躍の高さ | 最大1.8m |
| 1回の跳躍距離 | 最大9m |
省エネジャンプの秘密:腱が“バネ”として働く
カンガルーのホッピングがすごいのは、速いだけじゃなくて効率面。
筋肉と腱の弾性(バネ性)がエネルギー節約に関わっているため、疲れずに長距離を移動できるのです。
世界一有名なムキムキカンガルー「ロジャー」
“ムキムキカンガルー”といえば、やっぱりロジャー。
- オーストラリアの保護施設で暮らしていた“アルファ個体”
- 身長約2mと報じられたことも
- 金属バケツを握りつぶした写真で世界的に拡散
- 2018年、12歳で自然死(施設があるのはアリススプリングス)
という流れで有名になりました。ロジャーの訃報を伝えたニュースでも、その愛された生涯が振り返られています。

強面マッチョなのに、ぬいぐるみを抱いてのんびり寝そべる写真も多くて、そこがまた人気でした。
人間が気をつけること(動物園・野生)
ムキムキで面白い!…だけで近づくのは危険です。
- 野生では 近づかない
- 餌を与えない(人に慣れてトラブルになりやすい)
- とくにオス同士が争っている場面や、子連れの個体は距離を取る
行政・公的機関の注意喚起でも、餌付けを避けることや、状況によって安全行動を取ることが強く案内されています。
よくある質問(FAQ)
Q1. カンガルーは全員ムキムキ?
いいえ。とくにムキムキに見えるのは成熟したオスが多いです。メスや若い個体はもっとスリムです。
Q2. 草食なのに筋肉がつくのはズルくない?
ズルではなく、前胃の微生物発酵で植物の栄養を効率よく回収できる「体の仕組み」があるからです。
Q3. カンガルーのケンカ(ボクシング)は何のため?
主に優位性を示して繁殖のチャンスを得るためです。遊びではなく真剣勝負です。
まとめ
カンガルーがムキムキなのは、
- 繁殖をめぐる競争
- 格闘
- 跳躍生活(尻尾も活躍)
の結果です。
そして草食でも筋肉が作れるのは、前胃での微生物発酵があるから。
動物園でカンガルーを見かけたら、ぜひ 前腕・肩・尻尾 に注目してみてください。「かわいい」だけじゃない、進化の知恵が見えてきます。
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参考文献・出典
- Taronga Conservation Society Australia – Red Kangaroo
- ABC News – Roger the ripped kangaroo dies aged 12
- ABC News – Size of kangaroo arm muscles big lure in attracting females
- Biology Letters – The kangaroo’s tail propels and powers pentapedal locomotion
- J Exp Biol – The kangaroo’s fifth leg
- DBCA(Western Australia)Fauna Note – Red Kangaroo Management Plan
- Springer – Ontogenetic scaling of foregut volume and gut contents in the macropodid marsupials
- Queensland Government – Kangaroos and wallabies
- NSW National Parks – Safety tips for wildlife encounters






