犬の熱中症|症状・応急処置・予防対策

こちらを見つめるトイプードルのそらまめくん。青い肉球マークの迷子札をつけている

執筆・監修:めあり(愛玩動物飼養管理士2級)

犬の熱中症は、命に関わる緊急事態です。 「少しハアハアしているだけ」と思っても、短時間でぐったりしたり、倒れたりすることがあります。

この記事では、犬の熱中症の症状、すぐにできる応急処置、やってはいけない対応、日常でできる予防対策をわかりやすく解説します。

結論:犬が激しくパンティングしている、よだれが多い、ふらつく、ぐったりする、吐く、倒れるなどの症状がある場合は、熱中症の可能性があります。すぐに涼しい場所へ移動し、体を冷やし始めながら、動物病院へ連絡してください。

犬の熱中症は、早く気づいて、早く冷やし、早く受診することが大切です。

この記事は一般的な情報です。実際に愛犬の様子がおかしい場合は、自己判断せず、かかりつけの動物病院や夜間救急に相談してください。

目次

犬の熱中症の症状

犬の熱中症の症状は、最初は「暑そうにしているだけ」に見えることがあります。

しかし、次のような変化がある場合は注意が必要です。

初期に見られやすい症状

犬の熱中症で早めに気づきたいサインは、次の通りです。

  • 激しくハアハアする
  • 呼吸が荒い
  • よだれが多い
  • 落ち着きがない
  • 日陰や水を探す
  • 舌や歯ぐきが赤い
  • 心拍が速い
  • いつもより元気がない

犬は人間のように全身で汗をかいて体温調節することが得意ではありません。主にパンティング、つまりハアハアする呼吸で体温を下げようとします。そのため、暑い場所で呼吸がどんどん荒くなる場合は、体に大きな負担がかかっているサインです。

動物倫理ライター・めあり

「いつもより暑そう」ではなく、「いつもと違う呼吸をしている」と感じたら、早めに休ませるのが安全です。

危険度が高い症状

次の症状がある場合は、かなり危険な状態です。

  • ふらつく
  • 立てない
  • ぐったりする
  • 嘔吐する
  • 下痢をする
  • 意識がぼんやりしている
  • けいれんする
  • 倒れる
  • 呼びかけへの反応が弱い
  • 歯ぐきの色が赤すぎる、白っぽい、紫っぽい

MSD Veterinary Manualでは、犬や猫の熱中症のサインとして、熱い皮膚、嘔吐、よだれ、速いパンティング、苦しそうな様子、ふらつき、倒れる、意識を失うなどを挙げています。

この段階では「様子を見る」は危険です。 体を冷やしながら、すぐに動物病院へ連絡してください。

犬が熱中症になりやすい理由

犬は暑さに強い動物ではありません。

特に日本の夏は、気温だけでなく湿度も高くなります。犬にとっては、体に熱がこもりやすい環境です。

犬は地面からの熱を受けやすい

犬は人間よりも地面に近い場所を歩きます。

そのため、飼い主が「少し暑いな」と感じる程度でも、犬はアスファルトや地面からの照り返しを強く受けています。

環境省も、犬や猫などの動物は体高が低く、地面からの熱を受けやすいと説明しています。また、夏の日中の散歩や外出は、熱中症や肉球のやけどの危険があるため、早朝や夜などの涼しい時間帯が推奨されています。

短頭種・子犬・シニア犬は特に注意

次の犬は、熱中症リスクが高くなります。

  • フレンチブルドッグ
  • パグ
  • ブルドッグ
  • シーズー
  • ペキニーズ
  • 子犬
  • シニア犬
  • 肥満気味の犬
  • 心臓や呼吸器に持病がある犬
  • 毛量が多い犬

短頭種は、呼吸による体温調節が苦手な傾向があります。VCA Animal Hospitalsも、パグ、ボクサー、ブルドッグなどの短頭種は熱中症リスクが高く、気温や湿度がそれほど高くない状況でも症状が出ることがあると説明しています。

動物倫理ライター・めあり

短頭種の子は、「他の犬が大丈夫だから大丈夫」と考えない方が安心です。少し早すぎるくらいの暑さ対策でちょうどいいです。

犬の熱中症は何度から危険?

犬の熱中症に「この気温から」という明確な線引きはありません。気温だけでなく、湿度・地面の熱・日差し・運動量・その子の体質が組み合わさって起こるためです。

ひとつの目安として、RSPCA(英国)は、外気温が22度でも車内は1時間以内に47度に達する可能性があると注意喚起しています。これは英国の気候を前提にした啓発値です。日本の夏は外気温そのものが22度を大きく超える日が多いため、車内や締め切った室内では、より短時間で、より高温になり得ると考えておくのが安全です。

特に湿度が高い日は、パンティングによる体温調節がうまく働かず、気温以上に体に熱がこもります。「気温が何度か」だけでなく、「湿度が高くないか」「地面が熱くないか」も合わせて判断してください。

犬が熱中症かもしれない時の応急処置

犬が熱中症かもしれないと思ったら、次の順番で対応します。

Royal Veterinary Collegeは、犬の熱中症では「cool first, transport second」、つまりまず冷却を始め、その後に搬送・受診する考え方を紹介しています。動物病院への連絡は大切ですが、連絡を優先して冷却が遅れるより、涼しい場所で冷やし始めながら連絡するのが安全です。

1. すぐに涼しい場所へ移動する

まず、犬を暑い場所から離します。

  • 日陰
  • 冷房の効いた室内
  • 風通しのよい場所
  • 車内ならすぐ外へ出す

直射日光の下や、熱がこもった室内・車内にいる時間を減らすことが最優先です。

2. 体を冷やし始める

涼しい場所へ移動したら、すぐに体を冷やし始めます。冷たすぎない水を使います。

冷やす場所は次の部位です。

  • 首まわり
  • お腹
  • 足先
  • 内もも
  • 背中

水で濡らしながら、扇風機やエアコンの風を当てると、気化熱で体温を下げやすくなります。

VCA Animal Hospitalsでは、熱中症は緊急事態であり、安全に体温を下げることが優先だとされています。冷たい水ではなく涼しい水を使い、頭・お腹・脇・足などを冷やし、扇風機やエアコンの風を使う方法が紹介されています。

3. 冷やしながら動物病院へ連絡する

体を冷やし始めたら、そのまま冷却を続けながら、できるだけ早く動物病院へ連絡します。

伝える内容は次の通りです。

  • 犬種
  • 年齢
  • 体重
  • 今いる場所
  • いつから症状があるか
  • 今の症状
  • 意識があるか
  • 嘔吐やけいれんがあるか
  • 体を冷やし始めているか

熱中症は、見た目が少し落ち着いても内臓にダメージが残ることがあります。Royal Veterinary Collegeも、熱中症が疑われる場合は、冷却を始めたうえで獣医師の助言を受けること、元気そうに見えても診察が大切だと説明しています。

4. 飲める場合だけ少量の水を与える

犬の意識がはっきりしていて、自分で飲める場合は、少量の水を与えます。

ただし、無理に飲ませてはいけません。

やってはいけないことは次の通りです。

  • 口に水を流し込む
  • 意識が弱い犬に飲ませる
  • 一気に大量の水を飲ませる
  • 氷水を大量に飲ませる

MSD Veterinary Manualでも、体温が下がり始めたら少量の水を与えること、冷水に全身を浸けないことが案内されています。

犬の熱中症でやってはいけないこと

応急処置では、「早く冷やす」ことが大切です。

ただし、冷やし方を間違えると、かえって危険になることがあります。

氷水に全身を入れない

氷水で急激に冷やすと、血管が収縮し、体の表面から熱が逃げにくくなることがあります。

また、体が震えると熱を作ってしまう場合もあります。

「冷やす」は大切ですが、「極端に冷やす」は避けましょう。

濡れたタオルで包みっぱなしにしない

濡れたタオルは一時的には使えます。

しかし、体に巻いたまま放置すると、熱がこもることがあります。

VCA Animal Hospitalsも、濡れた布で犬を覆うと蒸発や放射による冷却を妨げる可能性があると説明しています。

使う場合は、こまめに交換し、風を当てながら冷やす方が安全です。

「落ち着いたから大丈夫」と判断しない

熱中症は、外から見える症状が落ち着いた後に、内臓への影響が出ることがあります。

特に次の症状があった場合は、必ず動物病院へ相談してください。

  • 倒れた
  • 嘔吐した
  • けいれんした
  • ぐったりした
  • 歯ぐきの色がおかしい
  • 呼吸が荒い状態が続いた

犬の熱中症を予防する方法

犬の熱中症は、予防が何より大切です。

特に夏は、「暑くなってから対策する」のではなく、「暑くなる前に避ける」意識が必要です。

散歩は早朝か夜にする

夏の日中の散歩は避けます。

おすすめは次の時間帯です。

  • 早朝
  • 日が落ちた後
  • 地面の熱が下がってから

ただし、夜でもアスファルトに熱が残っていることがあります。

散歩前には、手のひらで地面を触って確認します。 熱くて手を置いていられない場合は、犬の足にも負担があります。

【体験談】 我が家のトイプードル・そらまめくんも、夏は散歩の時間をがらっと変えています。日中は歩かせず、朝は日が高くなる前、夜は日が落ちてアスファルトの熱が引いてから。

出る前には必ず、私が地面に手のひらを当てて「置いていられるか」を確かめてから連れ出します。少しでも「熱いな」と感じたら、その日はコースを短くするか、時間をずらします。

小型犬は体高が低い分、地面の熱をまともに受けるので、飼い主の「熱くて手を置けない=今日はやめる」という一手間が、そのまま愛犬の安全につながると実感しています。

車内に犬を残さない

車内放置は、犬の熱中症で特に危険な場面です。

エアコンを切った車内は、短時間で高温になります。 環境省も、冷房の効いていない車内はわずかな時間でも非常に高温になるため、短時間でも車から離れる場合はペットと一緒に行動するよう呼びかけています。

また、RSPCAは、外気温が22度でも車内は1時間以内に47度に達する可能性があると注意喚起しています。日本の夏は外気温がこれを大きく超える日が多いため、危険度はさらに高いと考えてください。

「少しだけだから」 「日陰だから」 「窓を少し開けているから」

この判断が危険です。

室内でも温度と湿度を管理する

犬の熱中症は、外だけで起こるものではありません。

室内でも、次の状況では注意が必要です。

  • エアコンを使っていない
  • 風通しが悪い
  • 湿度が高い
  • 日差しが入る部屋
  • 留守番中に室温が上がる
  • 犬が涼しい場所へ移動できない

環境省も、室内であっても適切な温度・湿度管理を行い、ペットが自分で快適な場所へ移動できる環境を整えることが必要だとしています。

水分補給しやすい環境を作る

犬がいつでも水を飲めるようにします。

  • 水飲み場を複数置く
  • 外出時は水を持参する
  • 水皿をこまめに洗う
  • ぬるくなった水は替える
  • 留守番中も水切れしないようにする

暑い日は、犬が飲みたい時にすぐ飲めることが大切です。

保冷剤(アイスノン)を上手に使う

エアコンと合わせて、保冷剤を暑さ対策に取り入れるのもおすすめです。ポイントは、犬が自分で「乗る・離れる」を選べるようにすること。タオルなどで包んだ保冷剤を床に置いておけば、犬は暑ければ乗り、体が冷えたら自分で離れます。これは環境省が呼びかける「ペットが自分で快適な場所へ移動できる環境」の実践にもなります。

【体験談】 我が家では、夏の暑い日はアイスノン(人間用)が欠かせません。冷凍庫には常に10個ほどストックしています。以前はもう1匹(あずきちゃん)と2匹暮らしだった名残で、今もこの数を常備しています。

トイプードルのそらまめくんはアイスノンが大好きで、タオルでくるんだものの上に自分から乗ってくつろいでいます。一方、シャム系の猫・まめたくんはあまり気にしないタイプ。

同じ家の中でも、犬と猫とで暑さ対策の必要度がずいぶん違うのだな、と感じています。

アイスノンに顔をうずめて涼むトイプードルのそらまめくんと、奥のアルミプレートで寝そべる黒猫のまめたくん
アイスノン2つ使いでくつろぐそらまめくん(手前)と、アルミプレートで涼む猫のまめたくん(奥)。同じ家でも、犬と猫で涼み方がずいぶん違います。

外出のときも必ず持って行きます。夏の車内はエアコンが効いていても、そらまめくんにはタオルで包んだアイスノンを用意し、その上に座らせています。カートやリュックで移動するときも同じで、保冷剤は必ず持参します。

使い始めた頃は毎回タオルで巻いていましたが、今はタオルを半分に折って袋状になるよう3辺を縫うだけの「アイスノン入れ」を手作りしています。巻き直す手間がなく、洗濯も袋ごとできて便利です。

手作りのタオル製アイスノンカバーの上に座るそらまめくんのお昼寝姿
タオルを3辺縫って作った手作りのアイスノンカバー。この上に自分から乗ってくつろぎます。
イスノンカバーの上に座るそらまめくんのうしろ姿
こちらは市販のアイスノンカバーの上に座っているそらまめくん

市販のアイスノンカバーはこちらです

保冷剤を使うときの注意点も一つ。保冷剤の中身は製品によって成分が異なり、犬に有害なものが含まれている場合があります。犬が噛んだり舐めたりできないよう、必ずタオルや布で包み、袋が破れていないかを確認して使ってください。

犬連れのお出かけは無理をしない

当サイトでは、愛犬の空くんとマザー牧場へ行った体験記でも、気温32度の日にアスファルトの暑さを考えてカートを使い、アイスノンを活用したことを紹介しています。観覧車内が35度だったため、空くんの負担を考えて見送ったという判断も、夏のお出かけではとても大切です。

【体験談】
夏のお出かけでは、ペットカートが大活躍します。地面の照り返しを直接受けずにすみますし、そらまめくんが疲れたら休ませることもできます。我が家では、カートの座面にもアイスノンを敷いて出かけます。暑い日でも、扇風機の前でこのとおり満足そうな顔をしてくれます。

紺色のペットカートに乗り、扇風機の前で舌を出して笑顔のそらまめくん
お出かけ時はカートの座面にもアイスノンを。扇風機の前で、この笑顔です。

犬連れのお出かけでは、「せっかく来たから」よりも「愛犬が安全か」を優先しましょう。

犬連れのお出かけで実際に行った暑い日のマザー牧場での記事はこちら↓

犬の熱中症チェックリスト

散歩や外出中に、次の項目を確認してください。

  • 呼吸がいつもより荒くないか
  • 舌が大きく出たままになっていないか
  • よだれが増えていないか
  • 歩くスピードが落ちていないか
  • 日陰に行きたがっていないか
  • 水を欲しがっていないか
  • ふらつきがないか
  • 表情がぼんやりしていないか
  • 歯ぐきの色がいつもと違わないか
  • 地面が熱すぎないか

ひとつでも気になる変化があれば、すぐに休ませます。

「もう少し歩けるかも」ではなく、「ここでやめておこう」が愛犬を守ります。

犬の熱中症に関するよくある質問

犬の熱中症は何分くらいで起こりますか?

状況によります。

車内、高温多湿の室内、直射日光の下、激しい運動後などでは、短時間で危険な状態になることがあります。

特に車内は温度が急上昇しやすいため、数分でも油断できません。

犬の熱中症は何度から危険ですか?

明確な線引きはありません。気温だけでなく、湿度・地面の熱・日差し・運動量・その子の体質が関係します。

目安として、RSPCA(英国)は外気温22度でも車内は1時間以内に47度に達し得るとしています。日本の夏はこれを上回る日が多いため、より短時間・より高温になり得ると考えてください。湿度が高い日は、気温以上に体に熱がこもりやすくなります。

犬がハアハアしているだけでも熱中症ですか?

ハアハアするだけで必ず熱中症とは限りません。

しかし、次のような場合は注意が必要です。

  • 呼吸が止まらない
  • よだれが多い
  • ぐったりしている
  • 舌や歯ぐきの色が変
  • ふらつく
  • 水を飲んでも落ち着かない

いつもと違う呼吸が続く場合は、熱中症の初期症状の可能性があります。

犬の熱中症は家の中でも起こりますか?

起こります。

高温多湿の室内、風通しの悪い部屋、エアコンのない留守番中などは危険です。

犬が自分で涼しい場所に移動できるようにし、室温と湿度を管理しましょう。

熱中症かもしれない犬を冷やしてから病院へ行けばいいですか?

基本は、冷やしながら動物病院へ連絡します。

Royal Veterinary Collegeは、犬の熱中症では「cool first, transport second」、つまりまず冷却を始め、その後に搬送する考え方を紹介しています。ただし、獣医師への相談もできるだけ早く行うことが大切です。

まとめ:犬の熱中症は「早めの判断」が命を守る

犬の熱中症は、夏の散歩、車内、室内、犬連れのお出かけなど、身近な場面で起こります。

大切なのは、次の3つです。

  • 症状に早く気づく
  • すぐ涼しい場所へ移動して冷やし始める
  • 冷やしながら動物病院へ相談する

犬は「暑い」「つらい」と言葉で伝えることができません。

だからこそ、飼い主が小さな変化に気づくことが、愛犬を守る一番の熱中症対策です。

暑い日は、散歩を短くする。 お出かけを見送る。 車内に絶対に残さない。 室内でも温度と湿度を管理する。

その一つひとつが、愛犬の命を守る行動になります。

参考文献・出典

  • 環境省「防ごう!ペットの熱中症」ペットの熱中症予防に関するポスターの作成について
  • MSD Veterinary Manual「What to Do in a Dog or Cat Emergency」
  • VCA Animal Hospitals「Heat Stroke in Dogs」
  • Royal Veterinary College「Heatstroke in dogs and cats」
  • RSPCA「Dogs die in hot cars」

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最後まで読んでくださって、ありがとうございました!
動物たちの魅力をお伝えできていれば嬉しいです ♡
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