2025年12月28日、フランスの伝説的女優ブリジット・バルドーさんが91歳で逝去しました。
しかし彼女の本当の偉業は、華やかな銀幕での活躍ではなく、人生の後半を捧げた動物保護活動にあります。
この記事では、世界的スターの座を捨ててまで動物たちの命を守り続けた「もう一人のBB」の生涯と、私たちが学べる教訓をお伝えします。
この記事を読むとわかること:
- ブリジット・バルドーが動物愛護家になった理由と転機
- ブリジット・バルドー財団の具体的な活動内容と実績
- 世界中の動物たちを救った感動的なエピソードと私たちへのメッセージ
ブリジット・バルドーとは|伝説の女優から動物愛護家へ
華やかな女優時代を築いたBB
1934年9月28日、パリの裕福な家庭に生まれたブリジット・バルドーは、頭文字から「BB(ベベ)」の愛称で親しまれました。15歳でファッション雑誌『ELLE』の表紙モデルとなり、その美貌は瞬く間に注目を集めます。
1952年、18歳でスクリーンデビューを果たしたバルドーは、1956年の『素直な悪女』で世界的スターの座を獲得。ジャン=リュック・ゴダール監督の『軽蔑』(1963年)、ルイ・マル監督の『ビバ!マリア』(1965年)など、生涯で約50本の映画に出演し、「フランスのマリリン・モンロー」と称されました。

彼女の美しさは確かに人々を魅了しましたが、その裏には自殺未遂を繰り返すほどの心の葛藤がありました。華やかさの代償として、常にパパラッチに追われ、プライバシーを失う苦しみがあったのです。
39歳での引退決断|華やかさの裏にあった苦悩
1973年、39歳という女優としての全盛期に、バルドーは突然引退を表明します。最後の出演作『ドンファン』を撮り終えた彼女は、二度と映画に戻ることはありませんでした。
1996年の英ガーディアン紙とのインタビューで、彼女はこう振り返っています。
「私を取り巻く狂気は常に非現実的に感じられた。私はスターとしての人生に備えたことは一度もなかった」
世界的名声と引き換えに失った心の平穏。その空虚さを埋めるように、彼女は新たな使命を見出していきます。
動物への愛はどう生まれたか|転機となった出来事
最後の映画で共演したヤギとの出会い
動物愛護家としてのブリジット・バルドーの原点は、1973年の最後の映画撮影にありました。
映画『L’histoire très bonne et très joyeuse de Colinot trousse-chemise』の撮影で、バルドーは共演したヤギを買い取り、ホテルで世話をしたと伝えられています。この出来事が、彼女の心に眠っていた動物への深い愛情を呼び覚ましました。

動物への愛の目覚め
「撮影が終わったら処分される」と聞いたヤギを放っておけなかった彼女。この小さな命を守りたいという純粋な思いが、その後40年以上続く動物保護活動の出発点となったのです。
アザラシ狩りのドキュメンタリーが決定打に
引退後、バルドーはアザラシ狩りのドキュメンタリーを目にします。カナダの流氷上で、生後数週間の赤ちゃんアザラシが毛皮のために撲殺される様子を見た彼女は、深い衝撃を受けました。
1977年、バルドーは実際にカナダの流氷へ赴き、アザラシの赤ちゃんを抱きかかえる姿が『パリ・マッチ』の表紙を飾ります。この象徴的な行動は、世界中にアザラシ狩りの残酷さを訴えるきっかけとなりました。
1962年の転換|ペスクタリアンへの食生活の変化
1962年、屠畜場での家畜の殺し方を目の当たりにし、大きな衝撃を受けたと言われています。この経験をきっかけに、彼女はペスクタリアン(肉は食べないが、魚介類、乳製品、卵は摂取する食生活)へと転換しました。
バルドーは自身の言葉でこう訴えています。
「ベジタリアンになれとは言わないが、一切れの苦しみと恐怖で惨く死んだ動物の肉を食べるのを控えて欲しい。子牛の喉が開いて血まみれで肢が折れた拷問の写真を見て私は長い間泣いた。この恐ろしい血まみれの虐殺を世界で誰も告発しないのなら私がする。ビーフステーキは恐ろしい罪のない動物を苦しませた結果の死。」

私も20年以上、プラントベースの食生活を続けています。バルドーがペスクタリアン(魚は食べる)だったように、完璧なヴィーガンでなくても、自分のペースで動物福祉に配慮した食生活を選ぶことは可能です。
大切なのは、できる範囲で行動することです。
ブリジット・バルドー財団の設立と活動内容

1986年の財団設立|すべてを動物たちに捧げる決意
1986年、バルドーは自身の名を冠した「ブリジット・バルドー財団(Fondation Brigitte Bardot)」を設立します。この財団は、動物の権利擁護と福祉向上を目的とし、現在もフランス最大級の動物保護団体として活動を続けています。
財団設立時、彼女は驚くべき決断をします。
資金調達のために売却したもの:
- 女優時代の華やかな衣装やドレス
- 高価な宝石類
- 愛用していたギター
- 映画で着用した衣装(パコ・ラバンヌのメタリックドレス、ウェディングドレスなど)
財団の主な活動分野
ブリジット・バルドー財団は、以下の分野で活動を展開しています。
1. 動物実験の廃止運動
- 化粧品や医薬品の動物実験に反対
- 代替試験法の開発支援
2. 毛皮反対キャンペーン
- 1994年、著名デザイナーに毛皮使用中止を要請
- 知人たちにも毛皮を着ないよう懇願
3. 家畜の福祉向上
- 屠畜場の環境改善
- 1989~1992年、番組『S.O.S. Animaux(S.O.S動物)』に出演し、実態を告発
- ドキュメンタリー「家畜の現実」を制作→フランスの食肉加工法が厳格化
4. 野生動物の保護
- 象牙の不正取引の撲滅
- 闘牛反対運動
- 狩猟規制の強化
5. ペット保護活動
- 虐待された動物の救助と保護施設運営
- 里親探しのサポート
具体的な動物保護の実績|世界中で救われた命
カナダでのアザラシ保護運動|国際的な注目を集める
1977年の流氷訪問以降、バルドーのアザラシ保護運動は本格化します。
2009年には、動物の倫理的扱いを求める人々の会(PETA)の広告塔として、カナダ産メイプルシロップのボイコット運動を展開。アザラシ狩りへの抗議として、カナダの象徴的な製品を標的にすることで、国際的な議論を巻き起こしました。
タイの犬500頭救出作戦|アジアでの大規模保護活動
2016年3月、ブリジット・バルドー財団は、タイで大規模な動物救出作戦を実施したと報じられています。
救出の背景: 韓国、中国、タイ、ベトナムなどのアジア諸国では、犬や猫が食肉として取引されています。盗まれた犬や、物と交換された犬たちが、劣悪な状態でベトナムや中国へ輸送される途中でした。
救出作戦の詳細:
- タイ警察と協力し、食肉として運ばれる途中の犬を保護
- 地元の動物保護団体「Soi Dog Foundation」とコラボレーション
- 約500頭規模の犬を救出 ・救出した犬の一部をフランスのノルマンディ地方の愛護施設へ移送

命の価値に国境はない
この救出作戦は、アジアにおける動物福祉の意識向上にも貢献しました。タイ政府も動物愛護法を厳格化し、取り締まりを強化するきっかけとなったのです。
東日本大震災での支援|日本の動物たちへの思い
2011年、東日本大震災が発生すると、バルドーは他の動物保護団体とコラボレーションし、被災地の動物保護支援を表明しました。
彼女は日本政府に対し、以下の提案を行っています:
- 捕鯨活動を中止し、その資源を動物保護に転用すること
- 福島第一原子力発電所周辺の避難区域に置き去りにされた動物の保護
この提案は議論を呼びましたが、彼女の一貫した信念「すべての命に価値がある」という姿勢の表れでした。
フランス国内でのゾウ救出劇
2012年、リヨンで飼育されていた2頭のゾウが殺処分の危機に瀕しました。
バルドーはフランス政府に何度も手紙を書き、ゾウの救済を訴えます。しかし良い返事が得られなかったため、彼女は衝撃的な声明を出しました。
「動物の墓場になる国から逃げ、ロシアの国籍を依頼する」
この大胆な行動が功を奏し、メディアの注目が集まります。最終的に、モナコ公国のステファニー王女の働きかけもあり、ゾウたちはモナコで保護されることになりました。

この出来事は、一人の声が大きなうねりを生む可能性を示しています。バルドーのように、諦めずに声を上げ続けることの大切さを感じます。
その他の重要な活動実績
1985年
- フランソワ・ミッテラン大統領からレジオンドヌール勲章を授与されるも欠席
- 「私のレジオンドヌール勲章を苦しむ動物たちに捧げる」と宣言
1994年
- ヴァール県で猟師に向けてデモ行進を実施
- デザイナーに毛皮使用中止を依頼
1996年
- 馬の尻尾を切断する行為の禁止を要請
- イスラム教の儀式における羊の殺し方を告発(人種差別とされ罰金刑)
2012年現在も続く活動
- 南フランスの自宅「ラ・マドラグ」と「ラ・ガリグ」で、行き場のない動物を引き取り続けた
議論を呼んだ発言と活動|光と影
光と影を併せ持つ人生
バルドーの動物愛護活動は純粋で献身的でしたが、人間社会への発言では論争を呼ぶこともありました。
晩年、移民に関する発言などで複数回にわたり罰金刑を受けています。1992年には極右政党関係者と4度目の結婚をし、その政治的立場も物議を醸しました。
彼女の人生は、「動物への深い愛」と「人間社会への不寛容」が同居する複雑なものでした。しかし、この矛盾こそが人間らしさでもあります。完璧ではないからこそ、40年以上も動物のために闘い続けた情熱がより際立つのかもしれません。

私たちも、他人の欠点を批判するのではなく、その人の良い部分から学ぶことができます。バルドーから学ぶべきは、信念を貫く勇気と、声なき命への慈しみです。
晩年の生活と遺産|南仏での静かな暮らし

人目を避けた第二の人生
映画界を引退後、バルドーは南フランスのサントロペで静かに暮らしました。
2つの邸宅「ラ・マドラグ」と「ラ・ガリグ」を行き来し、そこで行き場のない動物たちを引き取り続けます。華やかなスポットライトから離れ、「農婦のように暮らしている」と語っていました。
2025年5月のBFMTVインタビューでの言葉:
「私は平和と自然を望んでいる」
サントロペの住民は、彼女の人柄をこう振り返ります。
「彼女をよく見かけました。通り過ぎる姿を眺めていて、機嫌がいいときには私たちに投げキスをしてくれたものです。ずっとここにいた人だから、もういないなんて不思議でなりません」
(サントロペ在住・ナタリー・ドロビゼさん、50歳)
ブリジット・バルドー財団の未来
2025年12月28日、自宅で静かに息を引き取ったバルドー。財団は声明でこう発表しました。
「世界的な名声を手にした俳優としてのキャリアを捨て、人生とエネルギーのすべてを動物愛護活動と自身の財団に捧げる道を選んだブリジット・バルドーの功績を称え、深い哀悼の意を表します」
財団は現在も活動を続けており、彼女の遺志は次世代へと受け継がれています。
財団の継続活動:
- ファッションブランド「Brigitte Bardot Paris」の収益の一部が財団に還元
- ランジェリーブランド「Brigitte Bardot Lingerie」も同様に財団を支援
- 60〜70年代のグラマラスなイメージを活かした商品展開で資金調達
ブリジット・バルドーから学ぶこと|私たちにできること
信念を貫く勇気|世界的名声を捨てた決断
バルドーが教えてくれるのは、本当に大切なものは何かを見極める勇気です。
世界的スターの座、富、名声——すべてを手にしていた彼女が、39歳で引退を決意したのは、心の声に従ったからでした。動物たちの苦しみを見過ごせなかった純粋な心が、彼女を動かしたのです。

私たちも、社会の期待や常識に縛られすぎていないか、自問する必要があります。本当に自分が大切にしたい価値は何か。バルドーの生き方は、その問いを投げかけています。
小さな行動から始める|一人の力が世界を変える
バルドーの動物保護活動は、1頭のヤギを買い取るという小さな行動から始まりました。
その小さな優しさが、やがて財団の設立につながり、世界中で何千もの動物の命を救うことになったのです。
私たちにできること:
- 知ること – 動物たちが置かれている状況を学ぶ
- 選択すること – 毛皮製品を買わない、動物実験していない化粧品を選ぶ
- 声を上げること – SNSやコミュニティで動物福祉について発信する
- 支援すること – 動物保護団体への寄付やボランティア
- 里親になること – 保護犬・保護猫を家族に迎える

一歩を踏み出す勇気
「自分一人が行動しても何も変わらない」と思うかもしれません。でも、バルドーも最初は1頭のヤギからでした。あなたの小さな優しさが、誰かの(何かの)命を救うかもしれないのです。
動物福祉への関心を持ち続ける
バルドーの活動は、時に過激で物議を醸しました。しかし、彼女が投げかけた問いは今も有効です。
私たちが考えるべき問い:
- 動物実験は本当に必要なのか?
- 毛皮のファッションは命より大切なのか?
- 家畜の福祉を改善できないのか?
- 野生動物の生息地を守れないのか?
- ペットを最後まで責任を持って飼えるのか?
まとめ|BBが遺したもの
ブリジット・バルドーは、2025年12月28日に91歳で逝去しました。
しかし、彼女が遺したのは映画の名場面だけではありません。動物たちの苦しみに目を向け、行動を起こす勇気こそが、私たちへの最大の遺産です。
バルドーの生涯が教えてくれること:
✓ 本当に大切なものは、名声や富ではなく、命への慈しみ ✓ 一人の行動が、世界を変えるきっかけになる ✓ 完璧でなくても、できることから始める勇気が大切 ✓ 動物たちの声なき声に耳を傾ける責任
彼女の魂は、救われた無数の命の中に、そして彼女の意志を受け継ぐ私たち一人ひとりの行動の中に、これからも生き続けるでしょう。
参考文献・出典
本記事は以下の信頼できる情報源に基づいて作成されています。
- ブリジット・バルドー – Wikipedia
- 時事通信 – ブリジット・バルドーさん死去、91歳 仏俳優、動物愛護家
- Bloomberg – ブリジット・バルドーさん死去-仏女優、60年代の「女性解放」の象徴
- THE HOLLYWOOD REPORTER JAPAN – 仏俳優ブリジット・バルドーが死去、91歳
- 映画.com – 「素直な悪女」「軽蔑」ブリジット・バルドーさん死去、91歳
- FashionNetwork 日本 – 映画界と動物愛護の象徴的存在、ブリジット・バルドー氏が死去
- THE RYUGAKU – 実は過激な動物愛護家?フランスの芸能人「ブリジット・バルドー」









