「雪の妖精」として大人気のシマエナガ。ふわふわの白い姿がよく知られていますが、実は夏のシマエナガは冬とまったく違う姿をしています。
「冬にシマエナガを見て感動したけれど、夏はどうなっているの?」
「夏のシマエナガは本当に同じ鳥?」
こんな疑問を持つ方も多いでしょう。この記事では、シマエナガの夏の生態と冬との違いを科学的根拠に基づいて詳しく解説します。
シマエナガとは?基本情報
分類と名前の由来
シマエナガは、スズメ目エナガ科に属する小鳥で、北海道に生息する「エナガ」の亜種です。
基本データ:
- 学名: Aegithalos caudatus trivirgatus
- 分類: スズメ目エナガ科エナガ属
- 体長: 約13.5cm(長い尾を含む)
- 体重: 約7~8g(1円玉8枚分ほどの軽さ)
- 尾の長さ: 約7cm(体とほぼ同じ長さ)
- 生息地: 世界で北海道のみ(北海道固有亜種)
「エナガ」という名前は、尾羽が長く丸い体型が柄杓(ひしゃく)に似ていることから、「柄が長い」→「エナガ」と名付けられました。
💡 豆知識
「シマエナガ」の「シマ」は「縞模様」ではなく、「島」(=北海道)を意味します。北海道という限られた地域にのみ生息することから名付けられました。
シマエナガは日本だけ?世界にもいる?
シマエナガ(亜種)は北海道固有ですが、エナガ(種)の仲間は世界中にいます。
世界のエナガ分布:
- ユーラシア大陸全体(ヨーロッパ~中央アジア~日本)
- 約20の亜種が存在
ヨーロッパやロシアにも「エナガ」がいますが、それらは別の亜種であり、シマエナガのような真っ白な顔ではありません。シマエナガの真っ白な顔は、北海道の厳しい寒冷環境に適応した結果と考えられています。
📌 重要なポイント
- シマエナガ = 北海道だけ ❄️
- エナガの仲間 = 世界中 🌍
- 真っ白な顔 = シマエナガだけの特徴
エナガとの違い
日本には4種類のエナガの亜種(エナガ、シマエナガ、キュウシュウエナガ、チョウセンエナガ)が生息していますが、シマエナガは顔が真っ白なのが最大の特徴です。
| 項目 | シマエナガ | 本州のエナガ |
| 生息地 | 北海道 | 本州・四国・九州 |
| 顔の模様 | 真っ白 | 黒い太い眉斑がある |
| 体の大きさ | ほぼ同じ | ほぼ同じ |
| 鳴き声 | ジュリリ、チーチー | ジュリリ、チーチー |
生息地と分布
シマエナガは北海道全域に生息する留鳥(りゅうちょう)です。渡り鳥のように南へ行かず、一年中北海道内で過ごします。
主な生息環境:
- 平野部から山地の森林
- 針葉樹林、広葉樹林
- 市街地の大きな公園や神社(主に冬)
「雪の妖精」と呼ばれる理由
シマエナガが「雪の妖精」という愛称で親しまれている理由は以下の通りです。
- 真っ白な顔と体: 雪景色に溶け込む純白の姿
- ふわふわの羽毛: 防寒のために空気を溜め込んだ姿
- 小さくて軽い体: ひらひらと舞うような飛び方
- つぶらな瞳: 黒い目と黄色いアイリング(まぶた)の愛らしさ
シマエナガの夏と冬|見た目の違い

Photo by Gin tonic / CC0
羽毛の変化|ふわふわからスリムへ
シマエナガは季節によって羽毛の量や質が変化するため、見た目が大きく変わります。
❄️ 冬のシマエナガ
- 羽毛を最大限にふくらませてまん丸な体型
- 全身真っ白でふわふわ(空気の層を作るため)
- 体重: 変わらないが、見た目は大きく見える
☀️ 夏のシマエナガ
- スリムで引き締まった体型(「濡れた猫」のように細く見えることも)
- 羽毛が少し減り、体に密着している
- 本来の骨格に近い、細身のシルエット

💬 シマエナガちゃんの主張
「冬は寒いから羽をふくらませてダウンジャケットみたいにしているんだよ! 夏は暑いからスリムになるのは当たり前でしょ?」
頭部と顔の変化
冬の特徴:
- 頭部全体が真っ白
- ふっくらとしていて、首と体の境目がわからない
夏の特徴:
- 頭頂部から背中にかけて、薄い褐色やグレーが混じる
- 顔の白さは残るが、冬ほど際立たない
- 少しシャープで「鳥らしい」野性的な顔つきになる
体型比較表
| 項目 | 冬の姿 | 夏の姿 |
| 体型 | 丸くふっくら(大福のよう) | スリムで細身(スタイリッシュ) |
| 羽毛 | 長くふわふわ | 短く密着 |
| 頭部の色 | 真っ白 | 茶褐色・グレーが混じる |
| 観察難易度 | 易しい(街中の公園にも来る) | 超難関(森の奥へ移動) |
シマエナガの夏の生態|繁殖と子育て

※イメージイラスト(AI生成)。実際の野鳥とは細部が異なる場合があります。
繁殖期間と産卵
シマエナガの繁殖期は4月~6月です。冬の群れでの生活を終え、ペア(つがい)ごとの生活に入ります。
- ペア形成(3月~4月): 冬の群れの中からパートナーを見つける
- 巣作り(4月): 苔、クモの糸、動物の毛などを使用し、伸縮性のある精巧な袋状の巣を作る
- 産卵(4月~5月): 1日1個のペースで、7~10個前後の卵を産む
- 抱卵・育雛: 約2週間の抱卵と、約2週間の育雛を経て巣立つ
💡 重要な生態的特徴:ヘルパー制度
シマエナガには、繁殖に失敗した他のペアの個体などが、子育て中のペアの給餌を手伝う「ヘルパー」という習性があります。小さな体で多くの雛を育てるための、賢い生存戦略です。
夏の食性|昆虫食への移行
子育てには高タンパクな食事が必要です。そのため、食性は冬と変わります。
☀️ 夏の主食(動物質メイン):
- 昆虫の幼虫(イモムシ、ケムシなど)
- クモ類
- アブラムシ
❄️ 冬の主食:
- 樹皮の隙間にいる小さな虫や卵
- 樹液(カエデ類などの樹液が凍ったツララを舐める)
「シマエナガだんご」|愛らしい幼鳥の姿

Photo from Pixabay
初夏、巣立った直後の幼鳥たちは、枝の上で体を寄せ合って一列に並ぶ習性があります。これが通称「シマエナガだんご」です。
シマエナガだんごの特徴:
- 巣立ち後すぐ(5月下旬~6月頃)に見られるレアな光景
- 親鳥が餌を運んでくるのを、おしくらまんじゅう状態で待っている
- 重要: 幼鳥は目の周り(アイリング)が赤~赤褐色で、大人(黄色)とは顔つきが違います。
シマエナガの夏の観察方法
観察が難しい理由
「夏にシマエナガが見つからない」と言われるのには理由があります。
- 森の奥に移動: 繁殖のため、人里離れた静かな森へ移動する
- 葉が生い茂る: 木々の葉が視界を遮り、小さな姿が見えない
- 地味な見た目: スズメや他の小鳥と紛れやすい
- 警戒心: 雛を守るため、冬よりも警戒心が強くなっている
夏に観察できる場所とヒント
冬のように「近所の公園」で見るのは難しいため、少し自然の豊かな場所へ行く必要があります。
北海道内のおすすめエリア(例):
- 札幌周辺: 野幌森林公園、藻岩山麓などの自然林
- 道東エリア: 釧路湿原周辺、知床半島の林道
- 道北エリア: 大雪山系の麓
🔍 探すコツ:鳴き声を頼りにする
姿は見えなくても、声は聞こえます。
- 「ジュリリ、ジュリリ」(低く濁った地鳴き)
- 「チー、チー、チー」(高い声)この声が聞こえたら、近くの木の上の方を探してみましょう。
観察時のマナーと倫理
シマエナガは野生動物です。特に夏は子育てのデリケートな時期ですので、以下のルールを徹底しましょう。
❌ 絶対にしてはいけないこと
- 巣に近づく/探す: 親鳥が育児放棄する原因になります。見つけても遠くから見守り、SNSで場所を公開しないこと。
- 鳴き声の再生(コールバック): ストレスを与え、縄張りを乱します。
- 長時間の居座り: 撮影のために巣の近くに留まるのはNGです。
よくある質問
Q1. 夏のシマエナガを見る確率は?
A. 冬に比べて非常に低いです。バードウォッチング初心者の方だと、見つけるのはかなり難しいかもしれません。まずは「鳴き声」を覚えるのが近道です。
Q2. シマエナガはペットとして飼えますか?
A. 飼育は絶対にできません。 シマエナガを含む日本の野鳥は「鳥獣保護管理法」により守られており、許可なく捕獲・飼育することは法律で禁止されています。
Q3. シマエナガの寿命は?
A. 野生下では厳しく、平均して3~5年程度と言われています。
まとめ|夏のシマエナガの魅力
シマエナガの夏は、冬の「白い妖精」とは一味違う、生命力にあふれた姿を見せてくれます。
- スリムで野性的な夏のフォルム
- 「シマエナガだんご」を作る愛らしい幼鳥たち
- 懸命に子育てをする親鳥の力強さ
冬のふわふわした姿も素敵ですが、厳しい自然の中で生きる夏の姿を知ることで、シマエナガのことがもっと好きになるはずです。もし夏の森で出会えたら、驚かせないようにそっと観察してみてくださいね。
参考文献・出典
- 『北海道の野鳥図鑑』
- 日本鳥学会『日本鳥類目録 改訂第7版』
- 環境省『鳥獣保護管理法の概要』






