シングルコート犬の完全ガイド / 猫のシングルコート?
犬を飼うときに気になるのが抜け毛の問題。「シングルコートの犬は抜け毛が少ない」という話を聞いたことがある方も多いでしょう。
しかし、シングルコートとは具体的にどのような被毛構造なのか、どんな犬種が該当するのか、正しく理解している人は意外と少ないのが現状です。
この記事では、シングルコートの基礎知識から実際のお手入れ方法まで、犬を愛する皆さんが知りたい情報を詳しく解説します。
シングルコートとは?基本的な特徴を理解しよう
シングルコートの被毛構造
シングルコートとは、オーバーコート(上毛)のみで構成される単層構造の被毛のことです。一般的に犬の被毛には以下の2種類があります:
- オーバーコート(上毛):太くてしっかりした毛質で、紫外線や雨、衝撃から皮膚を保護する役割
- アンダーコート(下毛):短く柔らかい毛で、保温や保湿、防水などの役割
シングルコートの犬は、このうちアンダーコートを持たず、オーバーコートのみが生えています。
シングルコートとダブルコートの違い
項目 | シングルコート | ダブルコート |
---|---|---|
被毛構造 | オーバーコートのみ | オーバーコート+アンダーコート |
換毛期 | なし | 年2回(春・秋) |
抜け毛の量 | 一年を通して少しずつ | 換毛期に大量 |
寒さへの耐性 | 弱い | 強い |
保温性 | 低い | 高い |
最も大きな違いは換毛期の有無です。ダブルコートの犬が春と秋に大量の毛が抜ける換毛期を迎えるのに対し、シングルコートの犬には明確な換毛期がありません。
シングルコート犬種一覧:小型犬から大型犬まで

小型犬
トイプードル
- 特徴的な巻き毛で人気の犬種
- 毛が絡みやすいため定期的なブラッシングが必要
- アレルギーを起こしにくいとされる
マルチーズ
- 純白の美しい被毛が特徴
- カットしないと地面に引きずるほど毛が伸びる
- 毎日のブラッシングが必要
ヨークシャーテリア
- シルクのような触感の直毛
- ダークスチールブルー&タンの美しい毛色
- 毛が長いため定期的なケアが必須
イタリアングレーハウンド
- 短毛のシングルコート
- スリムで筋肉質の体型
- 寒さに非常に弱いため防寒対策が重要
ミニチュアピンシャー
- 光沢のある短い被毛
- 寒さに弱い
- シングルコートでも比較的抜け毛が多い犬種

中型犬
バセンジー
- 短毛で筋肉質のスリム体型
- 「吠えない犬」として有名
- 週2回程度のブラッシングで十分

大型犬
ドーベルマン
- 短毛でスムーズな被毛
- 筋肉質で威厳のある体型
- お手入れは比較的簡単だが寒さに弱い
ダルメシアン
- 特徴的な斑点模様の短毛
- 活発で運動量が多い
- 短毛だが意外と抜け毛がある
スタンダードプードル
- トイプードルと同様の巻き毛
- 温厚で社交性が高い性格
- 定期的なトリミングが必要
ポーチュギーズウォータードッグ
- 泳ぎが得意な犬種
- 犬アレルギーの子どもがいる家庭でも飼いやすい

シングルコートのメリット・デメリット
メリット
1. 抜け毛が比較的少ない
- 換毛期がないため、大量の抜け毛に悩まされることが少ない
- 室内での掃除の負担が軽減される
2. アレルギーを起こしにくい
- 特にプードル系の犬種は、犬アレルギーの方でも飼いやすいとされる
3. 毛質が美しい
- 適切なケアを行えば、艶やかで美しい被毛を維持できる
デメリット
1. 寒さに弱い
- 保温性の高いアンダーコートがないため、冬場は防寒対策が必須
- 室温管理や犬服の着用が必要
2. 定期的なトリミングが必要
- 毛が伸び続ける犬種が多いため、月1回程度のトリミングが必要
- 長期的なコストがかかる
3. 毛が絡みやすい
- 特に長毛種は毛玉ができやすい
- 毎日のブラッシングが欠かせない
シングルコート犬の正しいお手入れ方法
基本的なブラッシング方法
頻度:毎日(長毛種)、週2-3回(短毛種)
ブラッシングの手順:
- 毛の流れに逆らってブラッシング
- 毛の奥のホコリや汚れを浮かせる
- 優しく、こすらずに払うように行う
- 毛の流れに沿ってブラッシング
- 毛並みを整える
- 上から下へ、一定のリズムで行う
- 特に注意する部分
- 耳の後ろ、脇、内股など摩擦が起きやすい部位
- 毛玉ができやすい箇所を重点的にケア
ブラシの選び方
スリッカーブラシ
- 毛玉やもつれの防止に効果的
- 長毛のシングルコートにおすすめ
ラバーブラシ
- 抜け毛の多いシングルコート(ミニピンなど)に適している
- マッサージ効果もある
獣毛ブラシ(豚毛・馬毛)
- 静電気が起きにくい
- 毛艶を出すのに効果的
シャンプーの頻度と方法
頻度:月1回程度
シャンプーのポイント:
- 犬用シャンプーを使用する
- ぬるめのお湯(37-38度)で洗う
- 完全に乾かすことが重要(毛が密集しているため)
- ドライヤーは低温で、ブラッシングしながら乾かす
毛玉ができてしまった場合の対処法
軽い毛玉の場合:
- 指で優しくほぐす
- 毛玉用のスプレーを使用
- 少しずつブラッシングで解く
頑固な毛玉の場合:
- 無理に引っ張らない
- 毛玉の根元をハサミでカット
- プロのトリマーに相談
シングルコート犬の寒さ対策
室内環境の管理
適切な室温:18-22度
- エアコンの風が直接当たらない場所にベッドを設置
- 床暖房やホットカーペットの活用
犬服の活用
選び方のポイント:
- 動きやすい素材とデザイン
- 適切なサイズ(きつすぎず、ゆるすぎず)
- 通気性の良い素材
着用タイミング:
- 散歩時(特に冬場)
- 室温が低い時
- 寝る時(必要に応じて)

よくある質問と回答
- シングルコートの犬は本当に抜け毛が少ないの?
はい、ダブルコートの犬と比較すると抜け毛は少ないですが、全く抜けないわけではありません。ミニチュアピンシャーやイタリアングレーハウンドなど、シングルコートでも比較的抜け毛が多い犬種もあります。
- シングルコートの犬にブラッシングは必要?
はい、絶対に必要です。特に長毛種は毎日のブラッシングが欠かせません。短毛種でも週2-3回のブラッシングで皮膚の健康を保ち、毛艶を維持できます。
- 冬場の散歩で注意すべきことは?
シングルコートの犬は寒さに弱いため、以下の点に注意してください:
- 犬服を着用させる
- 散歩の時間を短くする
- 極寒の日は室内での運動に切り替える
- 散歩後は足を温める
- トリミングの頻度はどのくらい?
月1回程度が目安です。毛が伸び続ける犬種(プードル、マルチーズなど)は定期的なカットが必要です。衛生面を考慮し、足裏や肛門周りの毛は月2回程度カットすることもあります。
犬と猫のシングルコート徹底比較

ここまで犬のシングルコートについて詳しく解説してきましたが、実は猫にもシングルコートとダブルコートがあります。犬猫両方を飼っている方や、将来的に両方飼いたいと考えている方のために、犬と猫のシングルコートの違いを比較してみましょう。
基本的な構造の共通点と違い
共通点:
- 両方とも被毛が単層構造
- 季節による大きな毛の生え変わりがない
- 全体的に抜け毛が比較的少ない傾向
違い:
項目 | 犬のシングルコート | 猫のシングルコート |
---|---|---|
毛の太さ | 比較的太い | より細い(0.01-0.08mm) |
毛穴からの本数 | 7-15本程度 | 7-15本程度(同程度) |
品種による差 | 犬種により大きく異なる | 猫種による差はやや少ない |
寒さへの適応 | 防寒対策が必須 | 比較的寒さに強い種もある |
見分け方の違い
犬の場合:
- 毛をかき分けて根元を確認
- アンダーコートの有無を目視で判断
- 犬種による分類が比較的明確
猫の場合:
- 毛をかき分けて内側の毛質をチェック
- 表面の毛と同じような毛のみ→シングルコート
- ふわふわした綿毛のような毛がある→ダブルコート
- 個体差があるため判断が難しい場合も
代表的な犬種・猫種比較
主要なシングルコート動物
- 犬の小型犬:トイプードル、マルチーズ、ヨークシャーテリア
- 犬の大型犬:スタンダードプードル、ドーベルマン、ダルメシア
- 猫の短毛種:シャム、ベンガル、シンガプーラ
- 猫の長毛種:メインクーン、ターキッシュアンゴラ

お手入れ方法の特徴
犬のシングルコート:
- 人間主導の積極的なケアが必要
- 防寒対策が最重要課題
- トリミングサロンでの定期的なプロケア
猫のシングルコート:
- 猫の自然なグルーミングを補助する程度
- 人間は最小限のサポートに留める
- 基本的にセルフケア能力が高い

季節ごとのケアの違い
春・夏のケア
犬の場合:
- 紫外線対策(特に短毛種)
- 冷房による乾燥対策
- 散歩時の熱中症予防
猫の場合:
- 室内の温度管理
- 毛玉の吐き戻し対策(グルーミング増加のため)
秋・冬のケア
犬の場合:
- 防寒対策が必須(犬服、室温管理)
- 乾燥による静電気対策
- 肉球のケア
猫の場合:
- 室内の湿度管理
- 暖房器具による火傷防止
- 犬ほど防寒対策は不要
犬猫両方を飼っている方へのアドバイス

ブラシの使い分け方法
共用できるブラシ:
- 獣毛ブラシ(豚毛・馬毛)
- ラバーブラシ
専用にしたいブラシ:
- スリッカーブラシ(犬用と猫用で硬さが異なる)
- コーム(目の細かさが違う)
効率的なお手入れスケジュール
平日:
- 犬:軽いブラッシング(5分)
- 猫:様子観察、必要に応じて軽くブラッシング
週末:
- 犬:しっかりとしたブラッシング(15-20分)
- 猫:全身ブラッシング(10分程度)
シングルコート同士での相性
毛の絡まりやすさの違い:
- 犬の方が静電気による毛玉が発生しやすい
- 猫は自分でグルーミングするため、人間のブラッシングは補助程度
季節による変化:
- 犬:冬場の乾燥で静電気対策が重要
- 猫:暖房による室内の乾燥で毛玉の吐き戻しが増加
コスト効率を考えた用品選び:
- 高品質な獣毛ブラシ1本で犬猫共用可能
- シャンプーは犬猫それぞれ専用品が必要

まとめ:シングルコート犬・猫との快適な生活のために
犬も猫も、シングルコートの動物は適切なケアを行えば抜け毛が少なく、美しい被毛を楽しめる素晴らしいパートナーです。しかし、同じシングルコートでも犬と猫では特徴や必要なケアが異なることを理解することが重要です。
シングルコートの犬・猫を飼う上で大切なこと:
- それぞれの特徴を理解する(犬は防寒重視、猫は自然なグルーミング重視)
- 適切なブラシを選択する(動物と毛質に合わせて)
- 定期的なケアを習慣化する(無理のない範囲で)
- 個体差を認識する(同じシングルコートでも個体により異なる)
犬と猫、それぞれの特性を活かしたケアを行うことで、シングルコートの美しい被毛はより一層輝きを増し、人間と動物の両方が快適に過ごせる環境を作ることができるでしょう。

参考文献・出典
本記事の作成にあたり、以下の信頼できる情報源を参考にしました:
学術・専門機関
- 一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)犬種基準
- 日本獣医師会 公式資料
- 動物看護学会 被毛ケアガイドライン
専門サイト・ブリーダー情報
- みんなのブリーダー「シングルコートの犬種とは?ダブルコートとの違いと飼育上の注意点」
- ペットケアネット「犬のシングルコートとは?小型犬~大型犬まで犬種一覧紹介」
- Live Natural for Dog「シングルコート犬とダブルコート犬の違い」
猫の被毛に関する専門情報
- ねこちゃんホンポ「猫のアンダーコートの見分け方とおすすめブラシ」
- ペトコト(PETOKOTO)「抜け毛が少ない猫の種類を紹介」
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※本記事の情報は2025年6月時点のものです。ペットの健康や被毛ケアについて心配な点がある場合は、必ず獣医師やプロのトリマーにご相談ください。