「ネズミって英語でmouseって言うよね?」と思っていたあなた、実は英語にはネズミを表す言葉が複数あるんです。しかも、使い分けを間違えると、英語圏の人には全く違う印象を与えてしまうことも。
この記事では、Mouse、Rat、Rodentの違いを生物学的な視点から文化的背景まで、わかりやすく徹底解説します。
※: 英語圏では「Rat」にネガティブなイメージがありますが、実際のラットは知能が高く愛情深い動物です。この記事では文化的な違いと、実際のラットの魅力の両方をお伝えします。
この記事でわかること
- Mouse、Rat、Rodentの正確な使い分け
- 英語圏でのネズミのイメージの違い
- 実際のラットの魅力(ファンシーラット)
- ネズミに関する英語のことわざや慣用句
- 世界的に有名なネズミキャラクターの英語表現
MouseとRatの基本的な違い
サイズと種類で使い分ける
日本語では全て「ネズミ」と一括りにしますが、英語では大きさによって明確に区別されています。
Mouse(マウス)の特徴
- 小型のネズミを指す
- 代表例:ハツカネズミ(House Mouse)
- 体長:約7cm以下
- 体重:成獣でも40g程度
- 特徴:小さな耳、尖った鼻先
- 生物学的特徴:胆のうがある
Rat(ラット)の特徴
- 大型のネズミを指す
- 代表例:ドブネズミ(Brown Rat)、クマネズミ(Black Rat)
- 体長:18~23cm程度
- 体重:280~480g(実験用では700gを超えることも)
- 特徴:より大きな体、長い尾
- 生物学的特徴:胆のうがない(機能は持つ)
🔍 ミニ知識
パソコンのマウスが「mouse」と名付けられたのは、ネズミと形が似ていたから。でもマウスの複数形は「mouses」ではなく「mice」なので、パソコンのマウスが複数ある場合は「computer mice」または「computer mouses」と表現します。
英語圏でのイメージの決定的な違い
Mouseは「可愛い」、Ratは「汚い」
英語圏では、MouseとRatで受けるイメージが全く異なります。この文化的な違いを理解することが非常に重要です。
Mouse(マウス)のイメージ
- ✨ 可愛らしい
- ✨ ペットとして飼える
- ✨ 壁の小さな穴から出てくる
- ✨ チーズが好き
- ✨ おとなしい動物
Rat(ラット)のイメージ
- ⚠️ 汚い、不潔
- ⚠️ 害獣・病気の媒介者
- ⚠️ 下水道や暗い場所に住む
- ⚠️ 食べ物を食い荒らす
- ⚠️ 裏切り者・卑怯者(スラング)
💬 英語圏の人の声
「台所にmouseがいたら気にならないけど、ratがいたら引っ越しを考える」というほど、両者のイメージには大きな差があります。
Rodent(げっ歯類)とは?
最も広い意味を持つ言葉
Rodent(ロウデント)は、げっ歯目(げっしもく)に属する動物の総称です。
Rodentに含まれる動物
- ネズミ類(MouseやRat)
- リス(Squirrel)
- ビーバー(Beaver)
- ハムスター(Hamster)
- モルモット(Guinea Pig)
Rodentの特徴
- 物をかじるのに適した大きな切歯(前歯)を持つ
- 全哺乳類の約40%を占める
- 非常に多様な生態系を持つ
使い分けのポイント
- Mouse/Rat = 具体的なネズミの種類
- Rodent = 科学的・専門的な文脈で使われる総称
【重要】実際のラットは誤解されている!
ここまで英語圏での「Rat」の悪いイメージについて説明してきましたが、実際のラットは全く違う動物なんです。
ファンシーラット:ペットとして大人気
ファンシーラットとは、ドブネズミをペット用に品種改良した動物で、欧米では非常に人気のあるペットです。
ファンシーラットの魅力
- 犬並みの知能を持つ(トイレを覚える、芸を覚える、名前に反応する)
- 非常に人懐っこい(肩に乗る、膝の上で寝る、飼い主を認識する)
- 社交性が高い(仲間思い、コミュニケーション能力が高い)
- 清潔好き(頻繁に毛づくろいをする)
- 温厚な性格(攻撃性が低い、優しい)
- 遊び好き(おもちゃで遊ぶ、探索を楽しむ)
生物学的にも優れた動物
- 学習能力が非常に高い
- 飼い主の顔や声を覚える
- 簡単な問題解決ができる
- 社会性があり、仲間とコミュニケーションを取る
- 医学研究で人類に貢献(30以上のノーベル賞の基礎研究)
なぜ悪いイメージがついたのか?
英語圏で「Rat」が悪いイメージを持つようになった最大の理由は:
14世紀のペスト大流行
- ヨーロッパで人口の1/3が死亡
- ネズミに寄生するノミが病原菌を媒介
- この歴史的トラウマが今も続いている
しかし、ペットとして飼われるファンシーラットは:
- 衛生的な環境で繁殖されている
- 病原菌の心配はほぼない
- 野生のラットとは全く異なる
イメージと現実のギャップ
項目 | 英語圏のイメージ | 実際のファンシーラット |
---|---|---|
性格 | 凶暴・危険 | 温厚・人懐っこい |
知能 | 低い | 犬並みに高い |
清潔さ | 不潔 | 清潔好き(毛づくろい頻繁) |
社交性 | 単独行動 | 社会性が高い |
ペット適性 | 不向き | 非常に適している |
💡 知っていましたか?
ファンシーラットは、欧米では「ポケットペット」と呼ばれ、ハムスターと同じくらい人気があります。日本でも近年、愛好家が増えています。
ラットへの公平な評価を
Ratという言葉には確かにネガティブなイメージがありますが、それは中世ヨーロッパの歴史的背景によるものです。
実際のラットは:
- 知能が高く、愛情深い
- 人類の医学の発展に多大な貢献
- ペットとして素晴らしいパートナー
言語と文化は面白いもので、同じ動物でも呼び方ひとつでイメージが180度変わるのです。
英語圏での表現例
干支のネズミ年は「Year of the Rat」
意外かもしれませんが、十二支の「子年(ねどし)」は英語で「Year of the Rat」と表現されます。
2020年は子年でした
→ 2020 was the Year of the Rat.
子年生まれの人は楽観的でエネルギッシュです
→ People born in the Year of the Rat are optimistic and energetic.
なぜ「Year of the Mouse」ではないのか?おそらく、干支のネズミは力強さや生命力を象徴しているため、より大きく強いイメージの「Rat」が選ばれたと考えられます。
ブラウンラット(ドブネズミ)の呼び方
ドブネズミには複数の英語表現があります:
- Brown Rat(最も一般的)
- Norway Rat
- Sewer Rat(下水のネズミ)
- Wharf Rat(波止場のネズミ)
ネズミに関する英語のことわざ・慣用句
よく使われる表現15選
英語には、ネズミを使った表現が数多く存在します。日常会話でも頻繁に使われるものをご紹介します。
Mouseを使った表現
1. (as) quiet as a mouse
- 意味:とても静か、物音一つ立てない
- 例文:The children were as quiet as a mouse during the movie.
- 訳:子供たちは映画の間、とても静かにしていた。
2. play cat and mouse
- 意味:いたちごっこをする、もてあそぶ
- 例文:The detective and the criminal were playing cat and mouse for months.
- 訳:刑事と犯罪者は何ヶ月もいたちごっこを続けていた。
3. mouse potato
- 意味:パソコンばかりいじっている人、引きこもり
- 由来:「couch potato(テレビばかり見る人)」のパソコン版
- 例文:He turned into a mouse potato during the pandemic.
- 訳:彼はパンデミック中に引きこもりになった。
4. when the cat’s away, the mice will play
- 意味:鬼の居ぬ間に洗濯
- 直訳:猫がいない時、ネズミは遊ぶ
- 例文:The students started chatting as soon as the teacher left. When the cat’s away, the mice will play!
- 訳:先生が出て行くとすぐ生徒たちはおしゃべりを始めた。まさに鬼の居ぬ間に洗濯だ!
Ratを使った表現
5. smell a rat
- 意味:怪しいと感じる、不審に思う
- 由来:猫がネズミの臭いで存在を察知することから
- 例文:I smelled a rat when he started making excuses.
- 訳:彼が言い訳をし始めた時、何か怪しいと感じた。
6. rat race
- 意味:激しい競争社会、過酷な生存競争
- 例文:I’m tired of the rat race. I want to move to the countryside.
- 訳:競争社会にうんざりだ。田舎に引っ越したい。
7. like rats deserting a sinking ship
- 意味:沈む船から逃げるネズミ(危機が迫ると我先に逃げる人々)
- 例文:Employees left the company like rats deserting a sinking ship.
- 訳:社員たちは沈む船から逃げるネズミのように会社を去った。
8. He is a rat!
- 意味:あいつは裏切り者だ! / 卑怯者だ!
- 注意:かなり強い非難の言葉
- 例文:He told everyone my secret. What a rat!
- 訳:彼は私の秘密をみんなに話した。なんて裏切り者だ!
その他の表現
9. as poor as a church mouse
- 意味:非常に貧しい
- 由来:教会に住むネズミはいつも腹ペコだから
- 例文:After losing his job, he was as poor as a church mouse.
- 訳:仕事を失った後、彼は非常に貧しくなった。
10. He is a lion at home but a mouse outside.
- 意味:内弁慶
- 直訳:家ではライオンだが、外ではネズミ
- 例文:My brother is a lion at home but a mouse outside.
- 訳:私の弟は内弁慶だ。
童話・映画の有名なネズミキャラクター
愛されるネズミたち
英語圏の文化において、ネズミキャラクターは特別な存在です。
1. ミッキーマウス(Mickey Mouse)
- 登場:1928年『蒸気船ウィリー』
- 特徴:世界で最も有名なネズミキャラクター
- 豆知識:初代の声はウォルト・ディズニー自身が担当
- 誕生日:11月18日(デビュー作の公開日)

2. ジェリー(Jerry)- トムとジェリー
- 作品:『Tom and Jerry』(1940年~)
- 特徴:小さいけれど賢い、チーズが大好き
- 影響:「ネズミ=チーズ好き」のイメージを世界に広めた
- 豆知識:相棒のトム(猫)とのドタバタ劇は80年以上愛されている

3. レミー(Remy)- レミーのおいしいレストラン
- 作品:ピクサー映画『Ratatouille』(2007年)
- 特徴:料理の才能を持つネズミ
- メッセージ:「誰でも料理ができる」
- 注意:作品タイトルの「Ratatouille」はフランス料理の名前

4. シンデレラのネズミたち
- ジャック(Jaq)とガス(Gus)
- 役割:シンデレラを助ける親友
- 名場面:かぼちゃの馬車を引く白馬に変身
- 豆知識:ハツカネズミ6匹が馬に変身した

5. バジル(Basil)- オリビアちゃんの大冒険
- 原題:『The Great Mouse Detective』(偉大なネズミ探偵)
- 特徴:ネズミ版シャーロック・ホームズ
- 住所:ベイカー街221B(ホームズ宅の地下)
- 初のCG本格使用ディズニーアニメ

6. ダンボの友達・ティモシー(Timothy Mouse)
- 作品:『Dumbo』(1941年)
- 役割:ダンボを勇気づける親友
- 名言:「大きな耳は君の才能だ!」

💬 面白トリビア
『トムとジェリー』では、穴の開いたチーズのイメージが定着しました。実際、『ジョジョの奇妙な冒険』第三部でポルナレフが「トムとジェリーに出てくるチーズみたい」と言及するシーンがあるほど、世界中に影響を与えています。
日本で愛されるネズミキャラクター
ねずみくん(ねずみくんのチョッキ)
日本を代表するネズミキャラクターといえば、ねずみくんのチョッキシリーズの主人公「ねずみくん」です。

作品情報
- 初版:1974年(2024年で50周年!)
- 作:なかえよしを
- 絵:上野紀子
- 出版社:ポプラ社
- シリーズ:全41作
- 累計発行部数:500万部超
ねずみくんの特徴
- 赤いチョッキがトレードマーク(お母さんが編んでくれた大切なもの)
- 身長:わずか2.6センチ
- 性格:体は小さいけれど心は優しい
- 年齢:6歳(小学1年生くらい)
- ガールフレンド:ねみちゃん
物語の魅力 第一作『ねずみくんのチョッキ』では、お母さんが編んでくれた赤いチョッキをあひるくんやぞうさんなど、どんどん大きな動物たちに「ちょっと きせてよ」と貸していくうちに、チョッキがどんどん伸びていく…というユーモラスで心温まるストーリー。
特徴的なデザイン
- 大きな余白のあるシンプルな絵
- 鉛筆で描かれたモノトーンの世界
- 会話体中心のテキスト
- フォルクスワーゲンの広告「Think Small」がデザインのヒントに
受賞歴
- 1975年 講談社出版文化賞絵本賞
- 2005年 巖谷小波文芸賞(なかえ・上野コンビに対して)
世代を超えた人気 1974年の刊行以来、親子3世代にわたって愛され続けているロングセラー絵本。シンプルな絵とやさしい物語は、時代を超えて子どもたちの心をつかんでいます。
📚 文化的意義
「ねずみくん」は日本において、西洋の「Mickey Mouse」に匹敵する存在感を持つネズミキャラクターです。小さな体で一生懸命がんばる姿は、多くの日本の子どもたちに勇気を与えてきました。
現代のネズミキャラクター
近年も様々なネズミキャラクターが登場しています:
海外作品
- Stuart Little(スチュアート・リトル):人間の家族に育てられたネズミ
- Despereaux(デスペロー):『ねずみの騎士デスペローの物語』の勇敢なネズミ
- Remy’s brother Emile(エミール):レミーの兄弟
日本作品

- ハム太郎(とっとこハム太郎):人気アニメの主人公(ハムスター)
英語学習に役立つ豆知識
複数形の特殊な変化
Mouseの複数形
- 単数:mouse → 複数:mice
- ❌ mouses ではない!
- 例:There are three mice in the cage.(ケージに3匹のネズミがいる)
Ratの複数形
- 単数:rat → 複数:rats
- 規則的な変化
- 例:Many rats live in the sewers.(多くのネズミが下水道に住んでいる)
スラングとしての使い方
Mouse
- 臆病者、内気な人
- 例:Don’t be such a mouse!(そんな臆病者になるな!)
Rat
- 裏切り者、密告者
- 動詞としても使える:rat on someone(誰かを密告する)
- 例:He ratted on his friends.(彼は友人を裏切った)
文化的・歴史的背景
なぜ日本では区別しないのか?
日本語で「ネズミ」と一括りにする理由は、文化的・歴史的背景にあります:
日本の文化
- 干支の「子(ね)」としてネズミは特別な存在
- 昔話や伝承に登場するネズミは概ね中立的
- 大黒天のお使いとして神聖視されることも
英語圏の文化
- 中世ヨーロッパでネズミはペストの媒介者として恐れられた
- 特に大型のRatは病気や不潔さの象徴に
- 一方、小型のMouseは比較的害が少なく、童話にも登場
ペストの歴史的影響
14世紀のヨーロッパで大流行した黒死病(ペスト)は、主にネズミに寄生するノミによって媒介されました。この歴史的経験が、英語圏における「Rat=不潔・危険」というイメージを決定づけたと考えられています。
実験動物としてのマウス・ラット
医学への貢献
なぜネズミが実験動物に?
- 遺伝子の数が人間とほぼ同じ
- ゲノムも人間に似ている
- 安価で繁殖力が高い
- 省スペースで飼育可能
ノーベル賞への貢献
- 30以上のノーベル生理学・医学賞がネズミを使った研究に基づいている
- 人間の遺伝子に関する病気のほとんどがネズミにも存在
- 新薬開発に不可欠な存在
🔬 科学的事実
マウスには胆のうがありますが、ラットにはありません。ただし、ラットも胆のうの機能自体は持っています。これは生物学的な重要な違いの一つです。
まとめ:Mouse・Rat・Rodentの使い分け
単語 | 意味 | サイズ | イメージ | 使用例 |
---|---|---|---|---|
Mouse | 小型ネズミ(ハツカネズミ等) | 小さい(7cm以下) | 可愛い、ペット | Mickey Mouse, computer mouse |
Rat | 大型ネズミ(ドブネズミ等) | 大きい(18-23cm) | 汚い、害獣 | Year of the Rat, rat race |
Rodent | げっ歯類全般 | 様々 | 科学的・中立的 | rodent control(駆除) |
こんな時はどっち?
✅ Mouse を使う場面
- ペットのネズミの話
- かわいいキャラクターの話
- パソコンのマウスの話
- 小さいネズミを見た時
✅ Rat を使う場面
- 害獣駆除の話
- 下水道や不潔な場所のネズミ
- 干支の子年の話
- 実験動物(大型)の話
- スラングで「裏切り者」を表現する時
✅ Rodent を使う場面
- 科学論文や専門的な文脈
- ネズミ類全般を指す時
- リスやビーバーなども含める時
参考文献・出典
- 千葉市科学館「ラットとマウスに、チューもくしてみよう!」
- Wikipedia「ラット」
- Wikipedia「ファンシーラット」
- Wikipedia「シンデレラ」
- Wikipedia「ミッキーマウス」
- Wikipedia「ねずみくん」
- ネイティブと英語について話したこと「ネズミを意味するラット(rat)とマウス(mouse)の違い」
- Cambridge Dictionary – Rodent
- ORICON NEWS「『トムとジェリー』愛されて80年」
- ポプラ社「ねずみくんのチョッキシリーズ」
- ポプラ社公式note「身近なちょっとした出来事に、気づいて感動してほしい~作者・なかえよしをさんインタビュー」
- Tierzine「ファンシーラットとは?注目のネズミのペット!」
- エキゾチックアニマル情報室「ファンシーラットってどんなネズミ」
- ディズニー公式サイト
