カラスのIQは何歳レベル?驚くべき知能と理由を科学的に解説!

夕暮れ時に街灯の上で佇むカラス。知性を感じさせる落ち着いた佇まい。

カラスのIQは何歳レベル?驚くべき知能と理由を科学的に解説!

私たちの周りでよく見かける黒い鳥、カラス。

「うるさい」「ゴミを散らかす」というイメージを持っている人も多いかもしれません。

でも実は、カラスは鳥の中でも特に頭が良く、「空飛ぶチンパンジー」とも呼ばれるほどなんです。

この記事では、カラスの種類や特徴から、その驚くべき知能まで、科学的な研究をもとに徹底解説します。

目次

カラスの基本知識:世界中で愛される黒い賢者たち

カラスの種類と特徴

カラス科(コルヴィダエ科)の鳥は世界中に約40種類存在します。日本では主にハシブトガラスハシボソガラスの2種類が見られます。ハシブトガラスは名前の通りくちばしが太く、額が高いのが特徴です。一方、ハシボソガラスは嘴が細く、額が低いです。

世界的に有名なカラスには、アメリカのアメリカガラス、ヨーロッパのヨーロッパカラス、そして特に知能研究で注目されるニューカレドニアカラスなどがあります。カラスは南極を除くすべての大陸に生息しており、森林から都市部まで、さまざまな環境に適応しています。

カラスの生態と寿命

カラスは雑食性で、種子、果物、昆虫、小動物、死骸など多様な食べ物を食べます。この柔軟な食性が、彼らが世界中で繁栄できている理由の一つです。

彼らは一夫一妻制で、つがいは長期間、時には一生を共にします。春に繁殖し、3〜6個の卵を産みます。両親で協力して雛を育てる家族愛の強い鳥です。

野生のカラスの寿命は種類によって異なりますが、平均して10〜15年ほどです。飼育下では20年以上生きる個体も珍しくありません。寿命の長さも、彼らが経験から学び、知識を蓄積できる理由の一つと考えられています。

世界各国のカラス観

カラスに対するイメージは国や文化によって大きく異なります:

  • 日本八咫烏(ヤタガラス)として神社のシンボルになっていたり、神聖な使者として尊ばれる一方、不気味さも持ち合わせる二面性があります
  • 欧米:死や不吉を象徴することが多く、ハロウィンなどでも不気味なシンボルとして使われます。特に英文学では Edgar Allan Poe の詩『大鴉(The Raven)』が有名です
  • 北欧神話:主神オーディンの肩に止まる二羽のカラス、フギン(思考)とムニン(記憶)は、知恵と記憶の象徴とされています
  • 北米先住民:多くの部族でカラスは創造主や変革者として尊敬されています
  • インド:祖先の魂の宿る鳥として、供物を捧げる習慣があります
  • 中国:孝行の象徴とされ、「烏の反哺(うのはんぽ)」という故事があります

世界のカラスの呼び方

カラスは世界中でさまざまな名前で呼ばれています:

  • 英語:Crow、Raven(大型種)
  • フランス語:Corbeau
  • ドイツ語:Krähe
  • スペイン語:Cuervo
  • イタリア語:Corvo
  • ロシア語:Ворона (Vorona)
  • 中国語:烏鴉 (Wūyā)
  • 韓国語:까마귀 (Kkamagwi)

多くの言語で、カラスの特徴的な鳴き声「カー」を模した名前が付けられているのが興味深いです。

カラスの頭の良さ:鳥の世界の天才

木の枝にとまるカラスの姿。背景は自然に溶け込み、野生で生きる賢さを映し出している。
Crow Iq Feature Image 2

鳥の脳の大きさと賢さの関係

カラスの脳は、体の大きさに比べてとても大きいことがわかっています。鳥の脳は人間や犬などの哺乳類とは形が違いますが、カラスの脳は特に発達していて、これが彼らの賢さの秘密です。

イギリスのオックスフォード大学の研究者、ネイサン・エメリー博士によると、カラスの脳の大きさは体重と比べるとチンパンジーに匹敵するほどなのだそうです(エメリー&クレイトン、2004年)。

脳の構造と進化の不思議

鳥と哺乳類は3億年以上前に別々の道を歩み始めました。でも不思議なことに、カラスと猿や人間は全く異なる脳の構造なのに、似たような知能を持っています。これを「似た環境で似た能力を獲得する進化」といいます。

アメリカのシアトル大学のジョン・マルゴン博士の2020年の研究では、カラスの脳には人間の「新皮質」に似た働きをする部分があり、これが高度な思考を可能にしていることがわかりました(マーズラフほか、2020年)。

カラスの驚くべき問題解決能力

道具を使いこなす

カラスの最も驚くべき能力の一つは、道具を使うことです。さらにすごいのは、目的に合わせて道具を作れることです。

特にニューカレドニアカラスという種類は、小枝を加工してフック(かぎ)を作り、それを使って木の穴や樹皮の隙間から虫を取り出します。オックスフォード大学の研究チームは、これらのカラスが問題に応じて違う形の道具を選んだり作ったりできることを発見しました(ハント&グレイ、2004年)。

また、2018年の研究では、ニューカレドニアカラスが複数の道具を組み合わせて使うこともできることがわかりました(ジェルバートほか、2018年)。

カラスと人間の幼い子どもが同じ机に向かい合って座っている様子。お互いに知的な視線を交わし、問題解決能力を暗示する構図。背景は柔らかな自然光に包まれており、知能比較の象徴的なシーン。

順序立てて問題を解決する

ドイツのアーヘン工科大学の研究では、カラスが「水の高さが変わる」という物理的な概念を理解していることがわかりました。実験では、細い筒に浮かぶエサを取るために、カラスは小石を筒に入れて水位を上げるという解決策を考え出しました(バード&エメリー、2009年)。

さらに驚くことに、カラスは軽い石よりも重い石を選んで入れるなど、より効率的な方法を選ぶこともできます。

カラスの社会的な頭の良さ

複雑な社会生活

カラスは群れで生活し、複雑な社会の中で生きています。彼らは家族単位で行動し、一緒に食べ物を探したり、危険を知らせたりします。

ワシントン大学のジョン・マルゾラフ教授の長い研究によると、アメリカガラスは人間の顔を覚えていて、過去の経験から特定の人に対する態度を決めること、さらにその情報を他のカラスに伝えることができるそうです(マーズラフほか、2010年)。

「他者の気持ちを理解する力」

「他者の気持ちを理解する力」は、他の生き物の心や考えを理解する能力で、長い間、人間と一部のサルだけが持つと考えられていました。しかし、最近の研究でカラスもこの能力を持つ可能性があることがわかってきました。

イギリスのケンブリッジ大学のニコラ・クレイトン教授のチームは、カラスが他のカラスの視点を理解し、それに基づいて行動を変えることを示す実験を行いました。例えば、食べ物を隠す時に他のカラスに見られていると、後でその食べ物を別の場所に移す行動を取ります(クレイトンほか、2007年)。

カラスの記憶力と学習能力

すごい長期記憶

カラスはとても優れた記憶力を持っています。彼らは数千もの食べ物の隠し場所を覚えることができ、何ヶ月後でもそれらを正確に思い出せます

ドイツのトュービンゲン大学の研究では、カラスが最大で2年以上も前に隠した食べ物の場所を記憶できることがわかりました(バルダ&カミル、1992年)。

見て学び、仲間に伝える

カラスは見ることで新しい技術を学び、それを仲間に伝えることができます。これは一種の文化のようなものです。

2018年、アメリカのコーネル大学の研究チームは、ある地域のカラスが車の通行を利用してクルミを割る技術を開発し、それが世代を超えて伝わっていることを報告しました(コーネル鳥類研究所、2018年)。

カラスと人間の関係

世界各地でのカラスのイメージ

カラスは世界中の文化で様々なイメージを持たれてきました。西洋では死や不吉の象徴とされることが多い一方、日本では昔から神の使いや縁起の良い鳥として大切にされてきました。

北米の先住民の多くの部族では、カラスは世界を作った神や変化をもたらす存在として物語に登場します。これは、彼らのカラスに対する長年の観察と、その頭の良さへの敬意を示していると言えるでしょう。

都会での生活に適応

カラスは人間が作った環境にもうまく適応しています。彼らは都会での生活に順応し、人間の行動パターンを学んで食べ物を手に入れる方法を見つけ出します。

東京大学の松原健司教授の研究によれば、日本のカラスはクルミを割るために車のタイヤを利用したり、信号機のタイミングを学習して安全に道路を渡ったりする行動が観察されています(松澤教授、2015年)。

日本のカラスが横断歩道でクルミをくわえ、信号機のタイミングを見て道路を渡ろうとしている様子。背景には車と青信号が写り、知能的な行動を示している。

カラスの言葉と認識能力

声でのコミュニケーション

カラスは複雑な鳴き声のシステムを持ち、様々な状況に応じた異なる鳴き声を使い分けます。彼らの「言葉」は、危険を知らせたり、縄張りを主張したり、仲間を認識したりする様々な役割を持っています。

コーネル大学の鳥類学者アン・クラーク博士の研究では、アメリカガラスが最大で250種類以上の異なる鳴き声を持ち、それぞれに特定の意味があることがわかっています(クラーク&クラーク、2000年)。

顔を覚える能力

カラスは人間の顔を見分ける驚くべき能力を持っています。彼らは過去に危害を加えた人間の顔を記憶し、その人を見かけると警戒します。

シアトル大学の研究では、一度捕まえられたカラスがその人の顔を数年にわたって記憶し、その情報を他のカラスにも伝えることがわかりました(マーズラフほか、2012年)。

カラスの頭の良さはどれくらい?

人間の子どもと比べると

様々な知能テストの結果から、カラスの問題解決能力は4〜7歳の人間の子どもに匹敵すると考えられています。特に物の動きや因果関係の理解においては、非常に優れています。

オーストリアのウィーン大学のトーマス・バギンヤ博士の研究では、カラスの概念理解能力が7歳の子どもの能力に近いことがわかっています(バギンヤほか、2016年)。

カラスと人間の幼い子どもが同じ机に向かい合って座っている様子。お互いに知的な視線を交わし、問題解決能力を暗示する構図。背景は柔らかな自然光に包まれており、知能比較の象徴的なシーン。

他の動物と比べると

カラスの知能は、多くの哺乳類より優れています。特に問題解決能力、道具の使用、社会的な知能においては、チンパンジーやイルカに匹敵する能力を持つとされています。

イギリスのサセックス大学の研究では、特定の課題においてカラスがチンパンジーよりも優れた成績を示すケースが報告されています(テイラーほか、2014年)。

最新のカラス研究と発見

木の枝にとまるカラスの姿。背景は自然に溶け込み、野生で生きる賢さを映し出している。

最新技術を使ったカラスの研究

最近の研究では、人工知能(AI)技術を活用してカラスの行動と頭の働きをより詳しく分析する試みが行われています。

2023年、ドイツのマックスプランク研究所のチームは、コンピューターの学習システムを使ってカラスの脳の活動パターンを分析し、彼らが複雑な問題を解決する時の思考過程の解明に取り組んでいます(ニーダーほか、2023年)。

カラスの自分自身の認識

最新の研究では、カラスが鏡に映った自分自身を認識する能力、つまり自己認識の可能性を示す証拠が報告されています。

フィンランドのヘルシンキ大学の研究チームは、改良版の「鏡テスト」を用いて、カラスが自分の体の一部に付けられた印を認識し、それを取り除こうとする行動を観察しました(ピカ&バギンヤ、2020年)。

まとめ:見直されるべきカラスの頭の良さ

カラスの知能は、長い間過小評価されてきました。しかし、近年の科学的研究により、彼らが持つ驚くべき能力が次々と明らかになっています。道具の使用と製作、複雑な問題解決、社会的な知能、優れた記憶力など、カラスの知能は多くの面で私たちを驚かせ続けています。

私たちの身近にいるこの黒い鳥は、単なる「うるさくて迷惑な存在」ではなく、独自の進化の道のりで高度な知能を獲得した、自然界の知的生命体の一つとして見直されるべきでしょう。カラスのさらなる研究は、動物の知能の進化について、そして違う生物の持つ知性の可能性について、私たちに新たな視点をもたらしてくれるはずです。

カラスとの上手な付き合い方

カラスの知能の高さを知ると、私たちの日常生活での彼らとの関わり方も変わってくるかもしれません:

  1. カラスは顔を覚える:カラスに危害を加えると、その人の顔を覚え、仲間にも伝えます。逆に餌をあげるなど良い関係を築くと、友好的に接してくれることもあります。
  2. ゴミ対策:カラスがゴミを荒らす問題は、彼らの知能と問題解決能力を考慮した対策が効果的です。単純な対策はすぐに突破されてしまいます。ゴミ袋はしっかりとしたケースに入れるか、カラスが来る時間を避けて出すのが良いでしょう。
  3. 観察を楽しむ:カラスの知的な行動を観察することは、自然の中の知性を感じる素晴らしい機会です。公園や庭でカラスの行動を観察してみましょう。彼らの問題解決能力や社会的な交流を見ることができるかもしれません。
  4. 直接餌付けは避ける:カラスに餌付けすると依存関係ができ、人間との距離感が変わってしまいます。自然な関係を保つためには、直接の餌付けは避けましょう。

カラスの知能を理解し尊重することで、人間とカラスのより良い共存関係を築くことができるでしょう。

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参考文献

  1. エメリー, N. J., & クレイトン, N. S. (2004). カラスの精神性:カラス科と類人猿における知能の収斂進化. サイエンス, 306(5703), 1903-1907.
  2. ハント, G. R., & グレイ, R. D. (2004). ニューカレドニアカラス(Corvus moneduloides)によるパンダナス道具の製作と使用の直接観察. アニマル・コグニション, 7(2), 114-120.
  3. ジェルバート, S. A., ミラー, R., シーストル, M., ベックル, M., チェク, L. G., グレイ, R. D., … & クレイトン, N. S. (2018). ニューカレドニアカラスは風の中での物体の動きを観察することで重さを推測する. 英国王立協会紀要 B, 285(1892).
  4. バード, C. D., & エメリー, N. J. (2009). ミヤマガラスは石を使って水位を上げ、浮かぶミミズに到達する. カレント・バイオロジー, 19(16), 1410-1414.
  5. マーズラフ, J. M., ウォールズ, J., コーネル, H. N., ウィゼイ, J. C., & クレイグ, D. P. (2010). 野生のアメリカガラスによる脅威となる人物の長期的認識. アニマル・ビヘイビア, 79(3), 699-707.
  6. クレイトン, N. S., ダリー, J. M., & エメリー, N. J. (2007). 食物を隠すカラス科による社会的認知. 西部カケスは自然の心理学者として. 英国王立協会哲学紀要 B:生物科学, 362(1480), 507-522.
  7. バルダ, R. P., & カミル, A. C. (1992). クラークスナットクラッカー(Nucifraga columbiana)の長期空間記憶. アニマル・ビヘイビア, 44(4), 761-769.
  8. 松澤, T. (2015). サツマイモ洗い行動の再考:プリメイツ誌の記事50周年. プリメイツ, 56(4), 285-287.
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  11. テイラー, A. H., エリフ, D., ハント, G. R., & グレイ, R. D. (2014). ニューカレドニアカラスの複雑な認知と行動革新. 英国王立協会紀要 B:生物科学, 282(1798).
  12. ニーダー, A., ワーゲナー, L., & リンネルト, P. (2023). カラスの尾状側方核における数表現の神経相関. 米国科学アカデミー紀要, 120(1).
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